高校生必読! 「科学の姿勢」を誠実に説く、“観察”の真髄

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君たちはなぜ、そんなことしてるのか? 東大准教授のひそやかな動物行動学講義

『君たちはなぜ、そんなことしてるのか? 東大准教授のひそやかな動物行動学講義』

出版社
山と溪谷社
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784635063654
発売日
2025/07/28
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

高校生必読! 「科学の姿勢」を誠実に説く、“観察”の真髄

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 この春、進学を考える高校生たちを対象に「大学にはこのような学部・学科がありますよ」と紹介する仕事をしたのだが、ほんとうに苦労した。たとえば動物行動学はすぐに高校生の目をひくが、「モフモフな動物を触り放題の日々なのでは」という素朴な期待はいったん否定しておかねばならない。難しい。

 この本はいまからでも推薦図書に加えたい。著者は『カラスの教科書』などで有名なカラスの専門家だが、この本はカラスの話だけではなく干潟のチドリもウミガメに付着するフジツボも無性生殖するゾウリムシも出てくる、脳にしみてくるような名講義(入門編)である。

 ある現象を説明するための仮説には、現時点でほぼ間違いないとされるレベルから単なる思いつきレベルまである。その信用度は〈どれだけ確かな証拠があるか、どれだけ反論に耐えたかによる〉。そして〈精度を高めながら積み上げた果てに、ついに真理に到達する……とは限らない〉。〈その点を考えると、科学は真理と相性が良くないとさえ言える〉。

これです。こういうことを教えてほしいんです。入門者や、入門するかどうかまだわからず周囲をうろうろしている人間には、まず「科学の姿勢」について説いてほしいのだ。そもそも科学とは何か。そして自分はその世界のどこにいて何を研究しているか。それらが書いてある本は、高校生に薦める図書リストのなかでも最上位に挙げたい。

 ネコは動くおもちゃに手を出して遊ぶ。でもその理由をひとことで言い切ることなどできない。「至近要因」「究極要因」「発生学的な由来」「進化的な由来」などと分解して考えていかないと、おのおのの出した答えがかみ合わないままになる。このことについて、わたしの知るかぎりもっとも誠実な解説をしてくれたのがこの本である。入門しようとしていない人にも読んでほしい。おもしろいからです。

新潮社 週刊新潮
2025年9月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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