私たちは輝かしいどころか、「未来の廃墟」に住んでいる

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  • 文庫 夜、寝る前に読みたい宇宙の話

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私たちは輝かしいどころか、「未来の廃墟」に住んでいる

[レビュアー] 藤井一至(土壌研究者)

藤井一至さん(土壌学者)のポケットに3冊

〈1〉『戦争と万博』椹木野衣著(講談社学術文庫、1540円)

〈2〉『人類はどこから来て、どこへ行くのか』エドワード・O・ウィルソン著、斉藤隆央訳(ちくま学芸文庫、1870円)

〈3〉『夜、寝る前に読みたい宇宙の話』野田祥代著(草思社文庫、990円)

 55年前の大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」であった。ところが、私たちは輝かしい未来どころか「未来の廃墟(はいきょ)」に住んでいることを厳しく指摘するのが〈1〉だ。戦争や原爆を体験した建築家たちが廃墟化を宿命付けられた中で都市像を模索し、敗戦からの威信回復のプロパガンダに使われることに葛藤を抱えながら作った万博だった。岡本太郎は太陽の塔を「人類は進歩も調和もしていない」というメッセージを込めて打ち立てたという。現在開催中の万博にも多様なメッセージがあるに違いない。

 〈2〉は、画家ゴーギャンの傑作に始まる哲学的な問いに、「生物多様性」という言葉を生み出した生物学者が挑む。人間を特徴づける社会性はシロアリや軍隊アリの歴史の方がずっと古い。昆虫は巣、人は集落を守るところに社会性の起源があり、働きアリは女王アリのロボットである点で人とは異なるという。解説によればこの説には批判もある。難題だが、自説を考えるのも楽しそうだ。

 〈3〉によれば、宇宙船から見えるキラキラ七色に輝く氷の粒が宇宙空間にはらはらと散らばっていく様子が美しいという。その正体は、船外に排出された宇宙飛行士の尿だ。40億年前、地球に誕生した生命が今日まで繋(つな)がる確率は僅(わず)か15%という説がある。ほどよいサイズの太陽が安定して輝き、月があることで地球の気候は安定していることに感謝したい。=寄稿=

読売新聞
2025年9月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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