『五胡十六国時代』
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ややこしいけど面白い中国「不人気時代」の楽しみ方
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
歴史の時代区分には、よく小説や映画の舞台になる時代と、全く不人気の時代がある。日本史なら戦国時代や幕末、中国史なら春秋戦国時代や三国時代など、やはり人気が高いのは戦乱の時代だ。
しかし同じ戦乱の時期でも、なぜか知名度の低い時代も存在する。中国史でいえば、五胡十六国時代がその最たるものだろう。三国志の時代は晋の統一によって終結するが、皇族間の抗争や異民族の割拠が相次ぎ、中国は再び長い戦乱の時代に突入する。これが五胡十六国時代だ。
小野響『五胡十六国時代 王朝の乱立と権力闘争』は、今まで広く知られることのなかったこの時代を、正面から取り上げた意欲作だ。六人の男たちを主役に据え、一三六年に及ぶ激動の時代を追っていく。
読んでみると、三国志に負けず劣らずの英雄たちが戦場を駆け抜け、権謀術数が渦巻いている。知らなかったことばかりで実に面白い――のだが、同時になぜ不人気であったかも理解できた気がする。同じような名前の国同士が争ったり、見慣れない地名や人名が多かったり、多くの出来事が同時多発的に進んだりで、予備知識なしではどうにもややこしいのだ。
ということで、AIにこの時代の年表を作ってもらい、ウィキペディアの地図を片手に読み進めてみるとずいぶん理解がしやすくなった。最新技術に助けてもらいながら歴史ロマンに浸るというのも、なかなか乙なものだ。


























