『無言のリーダーシップ』
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【毎日書評】定時で帰るのに成果が出るリーダーの秘訣は「無言のリーダーシップ」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
定時帰りで成果を出すリーダーと、忙しすぎて成果を出せないリーダー。
『無言のリーダーシップ 付加価値を生む仕組みのつくりかた』(田尻 望 著、SBクリエイティブ)の著者によれば、両者の違いは“ことばの多さ”にあるのだそうです。
成果を出すリーダーの多くは、いくつかのミーティングを除けば部下との会話はほぼゼロ。一方、成果を出せないリーダーは、口頭指示や質問などの対応に追われ、自分の仕事を後回しにしてしまうというのです。
リーダーが言葉の力に頼っている限り、チームは機能しない。私が現場で見てきた限り、場当たり的な口頭指示や部下を鼓舞するための激励は、仕組みがないチームがいますぐ崩壊しないための応急処置にすぎないからだ。(「はじめに リーダーに『言葉』は要らない」より)
マイナスをゼロにする仕事にばかり時間をとられ、成果を上げるための仕事に着手できないリーダーは少なくありません。けれども“忙しいのに成果が上がらない”という苦しいチーム運営を続けていれば、当然ながら限界に直面します。だからこそ、いまが苦しいリーダーは仕組みづくりに時間を割くべきだということ。
本書のタイトル「無言のリーダーシップ」とは、リーダーが何もしない「放任」や「無関心」を推奨するものでは決してない。
リーダーが指示や激励をしなくても、部下が自ら成果を上げられる仕組みが構築された状態を指す。(「はじめに リーダーに『言葉』は要らない」より)
そこで本書では、確実に「無言のリーダーシップ」に到達できるように、①「準備編」、②「問題解決編」、③「仕組み化編」、④「付加価値編」の4ステップに分けて体系的に解説されているのです。
きょうはスタート段階にあたる序章「ここから始まる『無言』の構築」に焦点を当ててみたいと思います。
最初こそ「言語化」を徹底せよ
「背中で語る」を好むリーダーも少なくありませんし、それ自体が悪いことではないでしょう。しかし「無言のリーダーシップ」は、このスタイルを指すものではないのだそうです。
「背中で語る」良さを活かしつつ、プラスα、その行動の構造を言語化することが重要だ。
たとえば、ロールプレイングや商談の流れのマニュアル化、OJT制度などの仕組みを機能させることと、「背中で語る」ことを並行して進めるべきだ。
リーダーの「背中」から、その根底にある思考プロセスや勘所を部下が効率よく吸収するためには、明文化された仕組みとの合わせ技が非常に有効だからである。(29ページより)
つまり「無言のリーダーシップ」は、徹底的な言語化と、そのうえに構築される仕組みがあってはじめて成立するものであるということです。(28ページより)
「自分がいなくても回る」は成功の証
構造の言語化と、それに基づく仕組み化が成熟したチームは、最終的にリーダーがいなくても問題なく動けるようになるもの。
「この状況なら、あの方法が使える」「過去のケースと似ているから、同じパターンで進めよう」というように部下が自発的に行動できるようになれば、たいていの問題はリーダー不在でも解決できるからです。
すなわち、「無言のリーダーシップ」の完成形とはリーダーが不要になること。
「リーダーがいなくてもチームが動くとすれば、自分の存在価値がなくなるのでは?」と思われるかもしれませんが、「リーダー不要」の組織ほどパフォーマンスが高いそう。リーダーがチームのマイクロマネジメントに手を焼かずにすむぶん、より大きな戦略や別の新規事業などに集中できるからです。
また、自走できる部下がリーダーの承認を待つことなく成果を上げていくため、チーム全体のスピード感も増すことになります。著者も現場で実感したそうですが、「リーダー不要」はマネジメント成功の証だということです。(33ページより)
「育てた部下が辞める」を、どう捉えるか?
もちろん、「自分が育てた部下が成長し、やがて転職してしまう」という悩みもあることでしょう。しかしそれは、その組織に「人を育てる仕組み」があるという証でもあるはず。
人材を一から育てられない組織が長期的に繁栄する可能性はゼロに等しい。
終身雇用制度が崩壊しつつある現代において、優秀な人材が外部に流出することは避けて通れない。(中略)必要な人材を必要なときに育て続けられる仕組みがある組織こそ、真に強い。(35ページより)
いわば、組織を進化の登竜門に変えるのを目指すことが、「無言のリーダーシップ」の考え方なのです。(35ページより)
結局、リーダーの役割とは?
リーダーの究極的な役割とは、チームが自律的に成果を上げられる仕組みを機能させ、次のステージに移動できる状態をつくること。
部下が自分なしでも成果を出せるようになれば、新しい部下の指導やより広範な組織マネジメント、経営企画などのポジションへと昇格していくことになるでしょう。
「リーダーのネクストステージ例」
・経営戦略を考える
→チームの成長戦略から、組織全体の成長戦略へ
・より大きな組織を率いる
→1つのチームから、複数チームを統括するリーダーへ
・全社の人材育成を統括する
→チームの人材育成から、組織全体の人材育成へ
(37ページより)
したがってリーダーは、「自分が不要になったなら、マネジメント成功だ」という考え方をするべきだと著者はいいます。いつまでもチームがリーダーとしての自分を必要としているのなら、リーダーもチームも成長がストップしている可能性が高いというのです。
たしかにそれは、非常に重要な視点であるといえるかもしれません。(36ページより)
成果を出すリーダーは、ことばでチームを操縦する存在ではなく、チームが自ら動く仕組みをつくり、運用する存在だと著者は述べています。自分自身とチームをより成長させるために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
著者紹介:印南敦史
作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: SBクリエイティブ


























