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最強最悪の怨霊のお祓いに妖怪界の大ボスと共に挑む物語
[レビュアー] 豊崎由美(書評家・ライター)
07年に毎日新聞社から出た高原英理の『神野悪五郎只今退散仕る』が、『夕凪姉妹と怨霊お祓い記』とタイトルを変えてようやく文庫化された。
夕凪紫都子という13歳の少女が、母方の祖母の時代からのミッションである最強最悪の怨霊のお祓いに、妖怪界の大ボス・神野悪五郎と共に挑むという物語。人を怨霊と化させるほどの恨み辛みを生むのが物語なら、それを癒やし鎮めるのもまた物語である。そんな深遠な物語発生論が、読んで無類に面白い物語の中に品良く忍び込ませてある。紫都子の妹・妙子が怨霊の荒ぶる魂を鎮めるために物語を語り直してやる終盤の感動はひとしお。初出時から加筆がなされているので、単行本で読んでしまっている方にもおすすめだ。
柴崎友香『かわうそ堀怪談見習い』(角川文庫)の主人公は、「恋愛小説家」という肩書きへの違和感から怪談を書くことにした〈わたし〉。3年ぶりに故郷の大阪に戻ってきている。とはいうものの、霊感がまったくない〈わたし〉は、その手の話に強い友人に会って話を聞いたりと、何とか気持ちを怪談モードに向かわせていくのだけれど――。
全部で29の短めの章からなるこの小説は、最初のうち、いわば日常の怪異を思わせるエピソードを積み重ねていく。自宅近くの公園で見かけたヘンテコなまるい生物や、雪の夜、人っ子一人いない一本道で出くわした黒い人などなど。で、そうやって描かれてきたすべてが、ある失われた記憶にまつわる恐怖譚の伏線だということに気づかされた時の驚きたるや。キーワードは〈まだ、こっちに来ないの?〉。ゾッとすること請け合いだ。
超常現象系のホラーが苦手な方には『ロルドの恐怖劇場』(平岡敦編訳、ちくま文庫)がおすすめ。アンドレ・ド・ロルドの目がとらえているのは、闇の奥にひそむ非現実的な何かではなく、人間の心の内奥なのだ。人はなぜ恐れるのか。人は何を恐れるのか。人はどうやって正気の道を踏みはずすのか。本書に収められた22篇は、その見本市といっても過言ではないのである。























