『英雄の輪 -HERO’S ISLAND Another Story-』
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<書評>『英雄の輪』真藤順丈 著
◆体験と悲喜受け継ぎ次代へ
太平洋戦争末期の地上戦で大勢の県民が亡くなり、27年間にわたりアメリカの統治下に置かれた沖縄には、1972年の日本復帰のあとも大規模な米軍基地がある。本書は、沖縄を舞台にした連作短編集である。2019年に第160回直木賞を受賞し、今年映画化された長編小説『宝島』(18年刊)に関連する6編が収録されている。
本土復帰から6年が過ぎた1978年。アメリカ式から日本式へ、沖縄県内の交通方法が切り替わる7月30日を前に、小学校教師のヤマコは安全指導で大忙しの日々を送っていた。40歳を過ぎて初めての出産を控えるヤマコは、東京で事件を起こしたトウゴら、何人かの元教え子が、同窓会に来ていないことに胸騒ぎを覚える。帰郷したトウゴは、何か危険な行動を企てているのか?
6編目に収められた「ナナサンマル」は、『宝島』の主要人物だったヤマコらの、“その後”が読める物語だ。巻頭からの5編は、沖縄戦の終結後、敗残兵となった琉球古典舞踊の家元に投降を呼びかける、奇抜な宣撫(せんぶ)活動を描いた「ブーテン」から始まる。続く「アーニーパイルで逢いましょう」「五つ目の石」「25セント」「家族の唄」はアメリカ統治時代の出来事を描いており、1945年夏から78年夏までの、沖縄の戦後をたどる構成になっている。
終戦からほどない沖縄にいた、米軍基地に侵入して物資を奪う者を指す「戦果アギヤー」や、「英雄」のモチーフが『宝島』から引き継がれている。読むうちに戦果と英雄のありようが変容して、英雄の群像劇になっていくさまに魅せられた。
<歳月をまたいでその瞬間、遠ざかった日々の幻影が、境界を超えていく戦果アギヤーの躍動と情念が、胸にせまるようにヤマコの目の前に顕現していた>
あの戦争とアメリカ統治時代が遠のいて、ヤマコも年を重ねた。しかし、本書に流れているのは、人々が歌う「島唄」である。過去の体験と悲喜を受け継いで、様相を変えて次代へと、英雄の物語が生まれる。
(講談社・2365円)
1977年生まれ。作家。『宝島』で山田風太郎賞、直木賞。『墓頭』など。
◆もう1冊
『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(上)(下)佐野眞一著(集英社文庫)


























