『Z家族』
- 著者
- 博報堂生活総合研究所 [著]
- 出版社
- 光文社
- ジャンル
- 社会科学/社会
- ISBN
- 9784334107567
- 発売日
- 2025/09/18
- 価格
- 1,188円(税込)
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【毎日書評】消えた「反抗期」。Z世代とその親世代は「なぜ、仲がいいのか?」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『Z家族 データが示す「若者と親」の近すぎる関係』(博報堂生活総合研究所 著、光文社新書)の著者である博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、1981年の設立以来、さまざまな時系列調査を蓄積してきた組織。
生活者の価値観や意識の変化を長期的に捉え、データに基づく生活洞察を通じて企業や社会に新たな気づきや視点を提供しているのだそうです。
今回、私たちは19〜22歳の若者を対象とした30年スパンの時系列調査「若者調査」を実施、分析するなかで、若者の幸福度や生活満足度が30年前に比べて非常に高まっていること、そして幸福感を構成する重要な要素である「人間関係」において、家族との関係が非常に緊密になっていることを突き止めました。(「はじめに:Z世代の幸福度を上げる『家族関係』」より)
世帯構成が大家族から核家族へ移行したことに代表されるように、戦後の日本社会は個人化の流れを歩んできました。現在では単身世帯が急増し、2025年前後には初めて全体の4割を超えると予測されているといいます(国立社会保険・人口問題研究所調べ)。
このまま家族のつながりが希薄化し、やがて消えていくのかと思われたものの、予想に反してZ世代のなかではむしろ「家族との関係の緊密化」という予想外の傾向が見られているということです。
もちろん、家族関係だけですべてを説明できるわけではないでしょう。しかし、企業で新世代の顧客確保を目指すマーケターや、人手不足のなかで若い人材の獲得と定着に尽力するHR(人事)担当者、あるいは若者を部下に持つ上司の方々などが、若者の「家族関係の緊密化」を意識することには大きな意味があるわけです。
そこで本書では、データやZ家族へのインタビュー、家族間のチャットアプリでのやり取りなどを通じ、大きな変化を捉えようとしているわけです。ここでは第2章「近く、親しく、密すぎるZ家族の姿」内の「消えた「反抗期」を深掘り分析」に焦点を当ててみたいと思います。
年「齢」が「消」える「消齢化」
かつて、子どもと親世代との間には、価値観やライフスタイルに関する明確な「断絶」がありました。前時代的な古い価値観を持っている親が「こうしなさい」と押しつけをするのに対し、子どもは「大人はなにもわかっていない」と反発しながら自分なりの価値観を模索していく――というような。
別の表現を用いるなら、子どもサイドから見ると「大人たちが選ぶものは古くてダサい」、大人サイドからすると「若いやつらが選ぶものは奇抜ではしたない」というような、埋めることが難しい対立構造があったわけです。
ところが、いまの親子はぶつかりあうことなく、仲よく共存しているのだとか。
著者によれば、その背景として押さえておくべきことがあるようです。ある時代までは世代や年齢によって分断されていた価値観や嗜好の違いが、目に見えて縮まってきているということ。親子間の「感覚のギャップ」がどんどん小さくなってきているのです。
私たちはこの現象を、年「齢」が「消」える――「消齢化」と呼んでいます。(69ページより)
ここで引き合いに出されているのは、生活総研が1992年から隔年で実施しているという「生活定点」の調査結果。1992年〜2022年の30年間にわたり聴取を続けている項目のうち、「年代による違いが小さくなっている」項目と「年代による違いが大きくなっている」項目がそれぞれ何項目あるのか比較してみたというのです。
すると、違いが小さくなった項目が70あるのに対し、違いが大きくなった項目は7つしかなかったのだそう。2002年〜2022年の20年間の継続聴取に条件を緩めると対象となる項目は増えるものの、そのなかで年代の違いが小さくなった項目数は172項目にものぼっているのだといいます。一方、違いが大きくなった項目は27項目にとどまっていたというので、その差は歴然としています。
具体的には、「夫婦はどんなことがあっても離婚しないほうがいいと思う」「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだ」「将来に備えるより現在をエンジョイするタイプだ」などの設問においては、かつては当然のものとしてあった“世代ごとの隔たり”が急速に小さくなっているそう。(68ページより)
変化の3つの傾向
なお、変化の傾向は、以下の3つに分類できるようです。
① 各年代の回答率が減少しながら近づくもの
(例:「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がいいと思う」「自分たちが年をとったら、子どもと同居したい」など)
② 各年代の回答率が上昇しながら近づくもの
(例:「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだ」「女性の上司のもとで働くことに抵抗はない」など)
③ 各年代の回答率が中央に寄っていくもの
(例:「将来に備えるより現在をエンジョイするタイプだ」「キャリアアップのためには、会社を替わってもかまわない」など)
(70ページより)
各世代の意識差はどんどん狭くなってきているわけですが、それは親子間における価値観やライフスタイルの違いが減ってきているということでもあるようです。
先述した「大人が選ぶものはダサい」というような、かつての若者特有の感覚は薄れ、考え方の違いによる衝突や「わかり合えない感じ」が少なくなっているわけです。
反抗を経験する若者が減ったり、あるにしても軽度になったりした背景には、親が“反抗すべき存在”ではなくなり、あまり価値観の変わらない“話のわかる存在”になってきたという事実があるのです。(70ページより)
分岐点はどこに?
では、「親と子でカルチャーが分断されている世代」と「分断されなくなった世代」との分岐点はどこにあるのでしょうか?
「生活定点」のデータをより深く分析してみると、「JJ・ポパイ世代」といわれる1952〜1960年生まれの人たち以降の世代で、旧来の価値観からの変容が起こっていることが分かりました。この世代は2025年時点で65〜73歳に位置します。(71ページより)
雑誌文化のなかで育ち、欧米的で自由な生活スタイルを取り入れた最初の世代。それ以前の日本社会的な全体主義・集団主義ではなく、個人主義的な性格が色濃くなっていく社会変化の影響をダイレクトに受けている人たちです。
大きくいえば、日本人はこのJJ・ポパイ世代を起点として、みんなで新しい時代の「同じ物語」を共有しているのです。(72ページより)
さらに団塊ジュニア(1971〜74年生まれ)などZ世代の親にあたる世代は、「ファミコン世代」の人たちでもあります。また、この世代はポケベルやカラオケ、クラブなどのカルチャーにもリアルタイムで触れてきています。
特筆すべきは、そうしたコミュニケーション手段や娯楽も、形を変えながら現代の若者に受け継がれているという事実。つまりZ世代とその親世代は、趣味やコンテンツの話も共有できるわけです。(71ページより)
緻密でありながら、気になった章からチェックすることもできる構成。ぜひとも、「なるほど、こういう傾向なのか」と楽しみながら肩の力を抜いて接してみたいところです。そうすれば、企業内でのZ世代との接し方のヒントを見つけることができるかもしれません。
著者紹介:印南敦史
作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: 光文社新書


























