『選ばない仕事選び』
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悩める中高生へのアドバイスが頑張りすぎてる大人にも直撃!
[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)
作家の浅生鴨さんは仕事をしたいわけではない。一冊を通して「本当はゴロゴロしていたい」「働きたくない」とずっと(本当にずっと)ゴネている。それなのに編集者さんに「将来の仕事や働き方について悩んでいる中高生に向けて書いて欲しい」と依頼されて渋々書いているのだ。この時点で浅生さんは“仕事に選ばれている”のだが、働きたくないとゴネながらも若者たちが焦って仕事を決めないように、やりがい搾取をされないように、特殊な大人としてアドバイスをしてくれる。しかも、浅生さん自身のアドバイスも話半分で聞いていいというのも信頼度が高い。世に溢れる「こうしたら成功する」みたいな胡散臭い話に対してビシッと「それは結果論で同じ人生などない、運もある」と言い切っているのもいい。軽い語り口で人生の重要な話をしてくれる大人はかなり貴重である。
自分の話になるが、私も仕事に選ばれている人間だと思う。学生時代に誰かの気持ちを動かしたいという思いが先にあり、その向こうにアイドルがあったからなれた。業務用の蕎麦しか食べられなかった貧乏時代から、好きな時に焼肉を食べられるようなお給料になったが、報酬の額で態度を変えることはないという浅生さんの言葉に深く共感する。そこから、世の中からなくなっていく本屋を1軒でも増やしたいと書店店主になったのだが「仕事とは世界を変える動作」という言葉に、私は仕事をできているかもしれないと自信になった。悩める中高生だけじゃなく、なぜ今の仕事をしているのかわからなくなってしまった大人が読むと、自分がちょっと世界を良くしている自覚を持てるかもしれない。
自分そのものを差し置いて仕事を頑張りすぎている人にも必読! ミニコラムの「白い手帳の喜び」も、びっしり仕事がないと不安だった時代を経ておやすみが幸せになった今、沁みるのだ。


























