『イン・ザ・メガチャーチ』
- 著者
- 朝井リョウ [著]
- 出版社
- 日経BP 日本経済新聞出版
- ジャンル
- 文学/日本文学、小説・物語
- ISBN
- 9784296121045
- 発売日
- 2025/09/03
- 価格
- 2,200円(税込)
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心が奪われるメカニズム 推し活物語の“沼”にハマる
[レビュアー] 南沢奈央(女優)
最近のお勧めの本を訊かれたら『生殖記』と答えているほど、わたしはあの衝撃と余韻に未だ浸ったままだ。だから新刊情報を見て、あれもう次の作品? いや、もう1年経っていたのか、と我に返る。朝井リョウさんはどんどん先へと進んでいる。ぼーっとしていたら置いていかれる。本屋さんに走れば、平積みの山の中、やはり今回もすでに谷を作り出している。
発売から約2週間で10万部を突破した本作が扱うのは、「ファンダム経済」。「推し」という言葉もすっかり一般的になっているが、特に推し活などを取り巻く経済圏のメカニズムを解剖し、さらに、人はどうして人物や作品に熱狂していくのか、どうして推すこと自体に中毒になっていくのかを、3人の人物の視点を使って多角的に描き出している。
正直、「推し活」というものに縁がないからなぁと、最初は椅子の背もたれに寄りかかりながら本を開いた。だけどすぐに、「推し」として人気の2・5次元俳優が出てきたときには、結構近い業界の話かもと姿勢を正し、オーディション番組でデビューが決まったアイドルグループの話は思い当たる節が多く、あっという間に前のめりになっていた。
わたしはこれまで全く興味のなかったオーディション番組に、数か月前、突如ハマった。ダンス・歌が未経験だった大学生や、自分と年の近い、一度はアイドルとは異なる道を進んでいた方がオーディションの間に成長していく姿に目が離せなくなり、周りから否定され、コンプレックスを抱えてきた10代の女の子が輝いていく様子に涙した。これはつまり、彼ら彼女らの「物語」に没入した、ということだ。
そう、本書は、人の心が動くメカニズムまでも暴いている。人は物語に弱い。帯にもある〈神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ〉という鋭い一言は、胸に刺さって抜けない。とくに役者をしていて、かつ本好きというわたしなどは、物語を提供する側にもなり得るし、物語を欲して中毒に陥る側にもなり得る。一見大きな隔たりがありそうな両側に、入ったり出たり、行ったり来たりしてしまう3人の人物たちの「物語」にもまた、読者は没入していく。沼。


























