『石徹白洋品店物語 地域の宝を掘り起こす小さなビジネス』
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ここに住みたい! 雪深く何もない集落で稼げる仕事を創り出す
[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

大麻の葉 ※画像はイメージ
その店は岐阜県郡上市の北部、福井県と接する山奥にある。集落の名前をそのまま取って石徹白洋品店。豪雪地帯の過疎の集落で開いたこの店がいま、新しい仕事の仕方で注目を浴びている。
著者は岐阜市のまちづくりの一環である小水力発電導入の実験事業担当者として石徹白を訪れた。その時に土地と地元の人々に魅せられてしまう。ここに住みたい。だが雪深く何もない集落で暮らせるのだろうか。実現するために3年4カ月の歳月を費やし仕事を見つけた。
それはかつてこの地に栄えていた「縫製」だった。自身がアトピー性皮膚炎で、市販の服が着られない時期も。だから肌の敏感な人でも着られる服を作りたい。そのために専門学校に通い技術を身につけ移り住んだ。
土地の名前を屋号にしたのは、伝統や文化、自然を基盤にしたこの場所らしい服作りを進める、という軸を真ん中に置いたからだ。
まちづくり活動の仲間と結婚して、築140年の古民家を自宅とギャラリーに。最初の商品はヘンプ(大麻)を使った手作りのワンピースだ。戦前はヘンプを栽培し、糸を績み手織りの布で服を作っていた。
さらに資料館に吊り下げられていた古いズボンに着目した。のちの主力商品となる『たつけ』だ。その昔、この地の誰もが着ていた布の無駄がでない仕立てのズボン。洋服と和服の中間のようで、身体に合わせて作るのでとても動きやすい。50年前まで作っていたという婦人から作り方を習い、肌に優しい麻や、草木染めや藍染めの布でも作り始めた。
大きな改革に必要な人材は「若者、馬鹿者、よそ者」とよく言われる。まさに石徹白集落のイノベーションはここから起こった。子どもを四人育てながら、従業員とともにこの土地に住み、暮らしの中で稼げる仕事をする。雪深い土地のため11月から4月は冬季休業。この間は手仕事をしながら春を待つのだろう。



























