トランプ氏は「無知の知」に欠けた危うさが……世界史の本から教訓を得る

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トランプ氏は「無知の知」に欠けた危うさが……世界史の本から教訓を得る

[レビュアー] 勅使川原真衣(組織開発専門家)

勅使川原真衣さん(組織開発専門家)のポケットに3冊

〈1〉『全員経営 ハイパフォーマンスを生む現場 13のケーススタディ』野中郁次郎/勝見明著(日経ビジネス人文庫、1100円)

〈2〉『最強の教訓! 世界史 まさかの結末に学ぶ』神野正史著(PHP文庫、1430円)

〈3〉『自分以外全員他人』西村亨著(ちくま文庫、836円)

 問題山積の社会にあって叫ばれるのは、強いリーダーシップである。日本に限らず、世界中あちらこちらの政権が物語る。しかし、傍若無人で屈強なリーダーがいれば、世の憂いは一掃されるのか。この問いへの答えが3冊それぞれにある。

 『全員経営』は「実践知を育成し、組織に埋め込み、圧倒的な競争力や高収益を実現している」企業のケーススタディー集だ。強い個人が形式知を基に引っ張る経営モデルと比して、社員全員が「腑(ふ)に落ちる」感覚にこそ盤石な組織力が宿る。強弱でも優劣でもなく、「全員」の話。異色のビジネス書だ。

 『最強の教訓! 世界史 まさかの結末に学ぶ』は歴史を教えない。歴史から学びを抽出した一冊。なかでも、最終章のD・トランプ氏の考察は必読だ。「無知の知」なき舵(かじ)取りの傲(ごう)慢(まん)さと危うさが、畳みかけるように示される。内容は皮肉が効いているものの、筆致は軽やか。一気読み必至である。

 『人間失格』に影響を受けた西村亨の第39回太宰治賞受賞作『自分以外全員他人』も人間の強さを描かない。孤独を礼賛するわけでもない。多様な「他人」が描かれるものの、愛(いと)しき隣人とは呼べないリアルさがいい。しかし絶えず希死念慮と向き合ってきた西村が今もここに在るのは、そんな他人(汝(なんじ))あっての我なのだろう。巻末の町田康との対談がまた最高なのだ。=寄稿=

読売新聞
2025年10月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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