『脳科学でわかった 仕事のストレスをなくす本』
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【毎日書評】「わかっているのに動けない…」が、「やり切った充実感」に変わる仕事ストレス解消法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『脳科学でわかった 仕事のストレスをなくす本』(西 剛志 著、アスコム)の著者は、経営者やビジネスパーソンのメンタリング、キャリア相談、企業研修などを通じて、多くの方々のストレスと向き合ってきたという脳科学者。
本書では、そういった現場での経験と脳科学の最新知見をもとに、「仕事のストレスをなくすための具体的な方法」をまとめているのです。
1万人以上の方々と密に向き合ってきた私が、まず強くお伝えしたいのは、「仕事のストレスを職場から家に持ち込まないように、脳の使い方を変えること」です。
家に帰ったら、少なくとも仕事のストレスを考えずにすむようにする。
それだけで心身の疲れ方はまったく違います。(「はじめに」より)
とはいえ帰宅後や休日にも、職場の苦手な人のことを考えたり、嫌な出来事を思い出してしまうことはよくあるもの。しかし、そういうことを繰り返していると心身はストレスを感じ、脳が強いダメージを受けることにもなってしまいます。だからこそ、そうならないように対処する必要があるのです。
そしてもう一つ大切なのは、「湧き上がったストレスを即座に打ち消す方法を知ること」です。
ストレスは完全にゼロにはできませんが、ストレスを感じた瞬間にうまく処理して、脳に居座らせないことが大事です。
そしてそのためには、脳内物質の働きを上手にコントロールする必要があるのです。(「はじめに」より)
こうした考え方に基づいて書かれた本書のなかから、きょうは第2章「仕事で溜まったストレスをなくす スーッと心と体がラクになる『すごい脳の使い方』」に注目してみたいと思います。
しんどい、つらいの正体は「脳内物質」不足
「ストレスがたまっている」とは、脳科学的にいえばストレスホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌され続け、扁桃体がつねに警報を鳴らし、前頭前野が疲弊しきっている状態。そのため緊急モードが解除されず、脳は「脳疲労」に陥るわけです。
この状態のもっとも厄介な点は、消したくてもなかなかストレスが消えないこと。帰宅して一息ついたときに会議での嫌なひとことを思い出すとか、リラックスしている週末に、月曜の締切のことが頭をよぎるとか。あるいは、夜中に目が覚めたと同時に、不安が再生されるなどということもあるかもしれません。
いずれにしてもそうした脳疲労に陥ると、日常の仕事で次のような事態に追い込まれるようです。
・仕事が机の上に積み上がっていく
・頭ではやるべきことがわかっているのに、体が動かない
・To Doリストを眺めるだけで、作業に手がつけられない
・優先順位が決められず、締め切りギリギリまで進まない
・アイデア会議で一言も発言できず、去年と同じ提案しか出ない
・単純作業なのにミスを繰り返す
・簡単な二択でさえ迷ってしまう
(96〜97ページより)
つまり、集中力、判断力、記憶力、コミュニケーション力、創造力、行動力など、あらゆる能力がストレスによって大幅に低下してしまうということ。
そればかりか、感情の抑制も効かなくなるのだとか。ちょっとしたことでイライラし、言動が荒くなる。人間関係でトラブルを起こす。暴飲暴食に走る。自分を責めて落ち込む――。
このように、心も体もコントロールが効かなくなっていくということです。
そして最終的には前頭前野が萎縮し、脳の回復力が失われ、認知機能そのものが壊れていくことになるのだといいます。放置しておくと仕事の成果どころか、心身の健康や人生の質そのものを失いかねないわけです。(94ページより)
ストレスをなくすと、脳は本来の能力を取り戻す
思った以上に深刻そうではありますが、それでも打つ手はあるそうです。
ストレスが生まれるのは、性格の問題ではなく、ましてや「努力が足りないから」ということでもないそう。脳の仕組みによって生まれるものなので、脳の仕組みを使えば消すことができるというのです。
ポイントは、DOS(ドーパミン、オキシトシン、セロトニンなどの脳内物質)を分泌させること。そうすれば、ストレスを受けて緊急モードになった脳を、クリアに研ぎ澄まされた「本来の性能」を発揮できる脳に戻せるというのです。
ドーパミンは「次もやってみたい」という期待や欲求を生み出し、集中力や判断力を支える物質です。学習や記憶、行動力の形成にも深く関わっています。
オキシトシンは「つながりホルモン」とも呼ばれ、安心感やリラックス状態を生み出し、ストレスを減らす効果があります。
セロトニンは、「安定と持続力のスイッチ」であり、気分を安定させ行動を持続させる効果が認められています。(98ページより)
これらの働きによって、扁桃体の過剰な警報が静まるということ。前頭前野の機能が回復し、次のような効果につながっていくようです。
・終わらないと思っていた仕事がスルスル片づいていく
・アイデアが自然に次々と浮かび、言葉になる
・迷ってばかりいた決断が、驚くほどシンプルに「これだ」と見える
・一日を終えても疲労感より「やり切った」という充実感が残る
(98〜99ページより)
このように、判断・集中・記憶などの機能が本来のレベルに戻るため、能力を余すところなく発揮できるようになるわけです。
著者によれば、これこそがストレスをなくすことの本当の意味。そこで、以後の章では、3つの脳内物質DOSを分泌させ、たまった仕事のストレスをなくすための具体的な方法が紹介されていきます。(97ページより)
本書で紹介されている方法を実践すれば、毎朝、会社に向かうときの気持ちに変化が生じるだろうと著者は述べています。仕事のストレスを取り除き、前向きに生きていくため、参考にしてみてはいかがでしょうか。
著者紹介:印南敦史
作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: アスコム


























