『クリスマス・イヴの聖徳太子』
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<書評>『クリスマス・イヴの聖徳太子』瀬戸夏子 著
[レビュアー] ひらりさ(文筆家)
◆連帯と排除、複雑さと対峙
高市早苗氏が第104代内閣総理大臣に選出された。女性首相誕生を評価する声もあれば、選択的夫婦別姓への反対に代表される彼女の態度は「名誉男性」であり男女平等を後退させると批判する声もある。評者は彼女を支持しないが、彼女を個人として見ず、「女」の代表として捉えすぎる風潮には同情を感じる。
女として評されること、自分もまた女を女として評してしまうことからの逃れがたさ。そのジレンマを愛し憎みながら書き続ける作家がいる。瀬戸夏子だ。
「なぜ女の作品を評するのが怖いのか。盗まれたくないから、どれだけこきおろしてもそこに薄皮一枚の肯定を挟まねばならないと知っているからだ。その薄皮一枚のことをここで仮にシスターフッドと呼んでみようか?」
文芸誌『文藝』に掲載されたこの文章を読んだ時、その大胆不敵さに衝撃を受けた。当時のフェミニズムの言葉は「ポジティブに連帯せよ」とエンパワーすることに専心していたからだ。同じジェンダーであることだけを拠(よ)り所にした連帯意識は、差異の排除に結びつきうる。なぜ同じ女なのに、こんなにもわかりあえない相手がいるのか。いや、同属意識ゆえに差異が気になり、すれ違い、憎んでしまうのではないか? 著者の文体は露悪的だが、個人が個人として扱われる世界を望む、人間への愛にあふれた檄文(げきぶん)でもある。
本書には2019年から2024年に発表されたエッセイ、小説、批評などが収録されている。フェミニズムの感性だけでなく、時事をすくいとる視線の独自性も魅力だ。木嶋佳苗とサガン、コロナウイルスと美容整形、マッチングアプリとガザ。オンリーワンの視点で時代に杭(くい)を刺し、カルチャーへの多大な愛着と歌人ならではの飛躍センスで、個人の地獄と世界の苦しみを行き来する。
一筋縄では行かない思考とレトリックの歯ごたえを味わううち、世界の複雑さに対峙(たいじ)するレジリエンス(適応力)が身につくだろう。
(河出書房新社・2200円)
1985年生まれ。歌人・批評家。著書『白手紙紀行』など。
◆もう1冊
『をとめよ素晴らしき人生を得よ 女人短歌のレジスタンス』瀬戸夏子著(柏書房)


























