『三頭の蝶の道』
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誰よりも己の才能は抜きんでている。「女流」を切り開いた三人の作家たち
[レビュアー] 中江有里(女優・作家)
「女優」は「俳優」と記されることが増えた。「俳優」が男性の仕事だった頃に生まれた言葉が「女優」だ。
「女流文学」という言葉も聞かなくなった。本書は男性作家ばかりの時代に「女流」という道を切り開いた作家たちを描いている。
「男のものするそれらより一段低い位にあると見なされた」時代に自分の文学をひたすら追求し、名を残した女流作家・河合理智子の告別式から幕は上がる。
参列した三人の作家は皆女性。理智子はこの三人以外は葬式に招んでくれるな、と言い遺した。
物語は時代ごとに三章に分かれ、どれも女流作家の死から始まり、その過去が編集者や後輩作家、周囲の人によって語られる。
理智子は「女流」という言葉を差別語として男性に使われることを許さなかった。でもあえて「女流」と自分たちを呼ぶことで物を書く女の決意を示した。谷崎を敬愛するあまりに、家の表札にキスしたエピソードから河野多惠子がモデルとわかる。
理智子と同時期に女流作家として評価を得た高柳るり子。メディアで引っ張りだこだった森羅万里。この二人も頭に浮かぶ作家がいるが、これらのレジェンドたちを知る後輩作家・山下路美のモデルはこの人! と勝手に想像を膨らませて、ニヤニヤしながら読み進めた。
「日本文学は、ゴシップの歴史」というセリフには、読んで勝手に想像する自分を見透かされた気がした。
作家は脳内で人を殺し、憐れな人を愛する。同業者の悪口を言って、嫉妬して、自分の才能は抜きんでていると自負している……強烈で、恐れ多くてたまらなく魅力的だ。
タイトルの「三頭」には三人の女流作家が重ね合わされる。ひらひらと舞う蝶を「頭」と数えた途端、何か巨大な生き物に思えてきた。
「女優」も「女流」も先陣が切り開いた証で自称するのは自由。「女流」というツワモノに出会える書。


























