『らくらく期待を超える思考法』
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【毎日書評】期待以上の成果を出す人が頭の中で考えている「本質追求」6つのステップ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
上司や顧客からの依頼を受け、自信を持ってアイデア出しをしたにもかかわらず、「期待していたものとは違う」とダメ出しをされるようなことはあるもの。
しかし『らくらく期待を超える思考法』(遠山尚秀 著、ぱる出版)の著者によれば、それは努力が足りないとか、能力が低いからということとは違うようです。原因は、相手の期待を正確に把握できていないこと。たしかに方向性がズレていたとしたら、どれだけ完璧な作業をしたとしても評価は低くなってしまうでしょう。
だからこそ重要なのは、思考法。ちょっとした考え方のコツのようなもので、具体的には、「本当に求められているものはなにか」と“ちょっと深く考える”ことこそが、求められるべき思考だということです。
相手が求めていることを追求する思考法は、やり方さえ分かれば難しいものではありません。能力や経験は関係なく、少し意識するだけで誰にでも習得できます。もしあなたに「仕事でもっと成果を上げたい」「コミュニケーション力を上げたい」「上手にプレゼンをしたい」といった願望が少しでもあるならば、ぜひ本書を読み進めてみてください。
この思考法を活用すれば、仕事でも日常生活でも、有利に立ち回れるようになるはずです。(「はじめに」より)
ましてや価値観が多様化した現代社会は、これまでの常識が通用しない時代だともいえます。知識や経験を蓄えるだけでなく、大切なのは“それをいかに整理して的確に扱うか”。それこそが、これからの時代を生き抜くために求められるスキルなのです。
こうした考え方に基づいて書かれた本書のなかから、きょうは第1章「本質追求思考で自分の価値を爆上げする」をクローズアップしてみたいと思います。
「本質追求思考」と「表面的解決思考」は決定的に違う
人としての価値を上げるために必要なのは、「ものごとの本質」を考えた発言ができるようになること。著者はそう述べています。
逆に、深く考えることなく「なんでもいいからとにかく解決しよう」という姿勢だと、「きょうは雨が降ると思いますか?」と質問されても、「はい」「いいえ」と答えて終わってしまうことになります。
もちろん、それは回答として間違いではないでしょう。とはいえ見逃すべきでないのは、“相手が雨を気にするのには必ず理由がある”という事実。そこまで汲み取ってあげないと、「正確には答えてくれるけれど、望んでいる情報はくれない人」と見られてしまうわけです。
このような、とにかく答えを出して解決しようという考え方を「表面的解決思考」と呼んでいます。そして、表面的解決思考しかできない人の役割は、AIに置き換えられてしまうのです。(24ページより)
現状の生成AIは、学習データに基づく正確性の高い回答を出力してくれます。学習した膨大な情報のなかから、質問に対してもっとも正確だと思われる回答を生成して教えてくれるということ。しかし、「なぜ人間がその質問をしたのか」という理由までは追求してくれません。
一方、それができるのが人間です。与えられた質問以外にも、「その人はどういう性格なのか」「これまでにどういう会話をしてきたのか」「いま、どんな言動をとっているのか」「いま、視線の先になにがあるのか」など、多くの情報を得ることが可能なのです。
そういったメタ情報――本質を補足する付随情報――をインプットすることで、質問に対する回答だけでなく、質問の本質に関わる回答も考えることができます。すなわち、それが「本質追求思考」だということです。(24ページより)
本質追求のための6ステップ
物事の本質を追求する思考は、以下の6ステップを意識することで誰にでも再現できるそうです。
ステップ① 課題認識
ステップ② 現状把握
ステップ③ 本質追求
ステップ④ 対策立案
ステップ⑤ 実行
ステップ⑥ 分析と学習
(27ページより)
ここでは各ステップを、前述の「きょうは雨が降ると思いますか?」と質問された場合を例に解説しています。前提は、課題の発生をきっかけに思考が始まること。この例だと、雨が降るかと質問されたことが課題の発生になるわけです。
ステップ① 課題認識(思考):
発生した課題を自分のなかで理解し、「どうやったら解決できるか」仮説を立てる思考のステップ。「きょうは雨が降ると思いますか?」と質問された場合は、「天気予報や空模様を見て、なるべく正確に回答することが解決につながるだろう」と仮説を立てるのです。
ステップ② 現状把握(行動):
必要な調査を行い、課題を解決するための事実を把握する行動のステップ。
天気の例でいえば、「天気予報を見る」「空模様を見て予測する」という行動が現状把握にあたります。
ステップ③ 本質追求(思考):
現状把握で明らかになった事実により、「課題は本当に解決するのか」を思考するステップ。天気の例の場合は、「この人はなぜ雨が降るかを気にしているんだろう」と、質問の真意を探ることが本質追求です。
ステップ④ 対策立案(思考):
本質追求の結果、「用意した回答では根本的な課題解決にはならない」と判断した場合に、「根本解決のためにはどうすればいいか」を再考するステップ。
「この人は傘を持って行くべきか悩んでいるのかも」という本質に気づいた場合は、「傘を持って行くべきだ」とアドバイスすることが本当に解決策になるわけです。
ステップ⑤ 実行(行動):
導き出した解決策を実行する行動のステップ。
天気の例なら、「天気予報では雨と言っていたので、傘は持って行ったほうがよさそうですね」などと回答することが該当します。
ステップ⑥ 分析と学習(思考):
実行した結果を受け、「その回答で正解だったのか」を振り返り、吸収する思考のステップ。相手の反応や動作結果などを見て正誤判断を行うのです。
本質追求思考は、つねにこの6ステップで成り立っているそう。尺度はさまざまであるものの、ステップの構成は変わらないといいます。(27ページより)
いまこそ求められているのは、「期待どおりだ」「期待以上だ」と評価してもらえるような仕事のできる人材。本書のなかから、そうなるための糸口を見つけてみてはいかがでしょうか。
作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: ぱる出版


























