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真珠湾では味噌汁を、ミッドウェイでは炊き込みご飯を。勇ましい戦闘体験ないけれど
[レビュアー] 佐久間文子(文芸ジャーナリスト)

※画像はイメージ
高橋孟『海軍めしたき物語』は、「めしたき兵」として軍艦に乗り込んだ若き日々を回想する。
勇ましい戦闘体験はなにひとつない。真珠湾攻撃の日は烹炊所で味噌汁をつくり、ミッドウェイ海戦の時は、戦闘食(竹の皮で包んだ牛肉入り炊き込みご飯)をつくっていた。
戦闘とかかわらず千数百人分の食事をつくっていたが、ひとたび爆撃を受ければ海に投げ出され、フカに足を喰われる(が、救出されて命は取り留める)。
てらいのない淡々とした文章で読ませる。戦後、新聞社の図案家として活躍した人だけに、細かく描き込まれた飄逸なイラストも味わい深い。飲み友だちだった田辺聖子のすすめで、田辺が編集長をつとめた時期に雑誌「面白半分」で連載を始め、単行本はベストセラーになっている。
書店で『海軍めしたき物語』に手が伸びたのは、その前に浅田次郎『獅子吼』(集英社文庫)を読んでいたからだ。
表題作の「獅子吼」は動物園のライオンの視点から戦争を描くもので、動物たちのために炊事場の残飯を運ぼうとした元飼育係の年若い二等兵が、罰として動物たちの処分を命じられる。二等兵に親切な、炊事班長の人物像が印象深い。
『ずっしり、あんこ』(河出文庫)はあんこをめぐるアンソロジーである。
「久保田万太郎君の『しるこ』のことを書いているのを見、僕も亦、『しるこ』のことを書いて見たい欲望を感じた」と書くのは芥川龍之介である。「紅毛人たちにも一椀の『しるこ』をすすめて見るが善い」とめちゃくちゃ肩に力の入った書きぶりである。
内田百間の「大手饅頭」の書き出しは、「私は度度、大手饅頭の夢を見る」。
池波正太郎は、酒も飲むが甘いものも好きで、それをばかにする幼なじみと、神田の「竹むら」でばったり会ったてんまつ(「粟ぜんざい―神田〔竹むら〕」)は落語のようなおかしみがある。
『海軍めしたき物語』にも「海軍のしるこ」が紹介されていて、戦闘のさなかに夜食の汁粉をつくっていたりする。























