完璧を手放す。大変そうなのに疲れない禅僧の「休息の作法」

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疲れない心をつくる休息の作法

『疲れない心をつくる休息の作法』

著者
枡野 俊明 [著]
出版社
三笠書房
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784837940654
発売日
2025/11/20
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】完璧を手放す。大変そうなのに疲れない禅僧の「休息の作法」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

肉体的に厳しい作務(さむ)を行っているだけに、禅僧の日常はいかにも大変そうです。ところが『疲れない心をつくる休息の作法』(枡野俊明 著、三笠書房)の著者によれば、心身がくたびれたり、体調を大きく崩したりすることはほとんどないのだとか。

もちろん人間である以上、ときには疲れを感じることもあるでしょう。とはいえ禅僧は一般的な人よりも「疲れにくい」、あるいは「疲れをためこまないよう、休息を取るのがうまい」というのです。

なぜ、禅僧は“疲れ知らず”なのでしょうか。

それは、「禅的生活」には、心身を健やかにするための、たくさんの実践的な知恵が詰まっているからだと、私は考えています。(「はじめに」より)

たとえば坐禅を行えば、脳に休息を与えることができ、心身が整うことでしょう。ゆっくり、ていねいに食事と向き合えば、心身を休ませることができそうです。掃除をすれば心が整い、心のモヤモヤが消えていくはず。

他にもいろいろあるでしょうが、禅的生活はこのように、心と体を健やかにするヒントであふれているというのです。

いってしまえば、禅の教えは、すべからく「心身の休息」や「ムダな疲れを取り除くこと」につながっているのです。

私たち禅僧が日々、“疲れ知らず”の生活を送れているのも、ひとえに、こうした禅的「休息の方法」を心得ているおかげといえるでしょう。(「はじめに」より)

また、禅の教えは「日々の暮らし」とも結びついているもの。そのため、特別なテクニックも長期間の休暇も不要。毎日の生活や習慣をちょっと変えるだけで、どんな人でも深い休息を得ることができるそうです。

そんな禅の考え方を仕事に生かすために、第3章「『疲れやすい』考え方を、手放してみる 自分で自分を苦しめないために」に焦点を当ててみたいと思います。

「あるがままの自分を、受け入れる」――そこから始めましょう

仕事について人はなにかと「完璧にやり遂げよう」と意気込みがち。もちろん大事なことですが、あまりにも「完璧」に囚われすぎるのは考えもの。自分のみならず他人に対しても必要以上に完璧を求めるなど、人間関係に影響を与える可能性もあるからです。

しかしそれでは、自分もまわりも疲れるだけ。それに、どれだけがんばっても、ミスの内容に細心の注意を払っても、うまくいかないときはうまくいかないのです。むしろ、期待どおりに物事が運ぶことのほうが少ないかもしれません。

「廓然無聖(かくねんむしょう)」という禅語があります。

「廓然」とは「何もない」という意味。「そもそもこの世には、特別な聖者も、賢者もいない。だから、あるがままの自分を認めてあげればいいじゃないか」――。

この禅語には、そんな深いメッセージがこめられています。(97ページより)

完璧を求める人ほど失敗を恐れるものかもしれませんが、そもそも人生にムダな失敗はないのです。それどころか、失敗は自分を成長させたり、今後の仕事で高い成果を上げるために必要不可欠なものでもあるといえます。

大切なのは、「完璧に仕上げる」ことではなく、「ベストを尽くす」こと。そういう姿勢でいれば、完璧主義に振り回されて疲れることもなくなるのではないでしょうか。(96ページより)

仕事も人生も、「結果がすべて」ではありません

「コスパ」「タイパ」ということばが使われることからもわかるように、現代のビジネスにおいては「できるだけ短期間で結果を出す」ことが求められがちです。しかし効率一辺倒になると、たとえそれなりの結果が出たとしても、プロセスの作業が雑になり、内容が薄っぺらくなる危険があります。

しかも“結果至上主義”を通すと、無理が生じて心身が疲れてしまうもの。目先の結果を得るためには、休むことなく作業を続けたり、一日の仕事量や残業時間を増やしたりせざるを得ないからです。

そうならないためには、「結果は出すものではなく、自然と得られるものだ」と、考えを改める必要があります。

禅にはそもそも、「結果を出すためにがんばる」という考え方がありません。

「結果自然成(けつかじねんになる)」という禅語があるように、

「目の前にある仕事に取り組み、小さな成果を一つひとつ、地道にコツコツと積み上げていくことで、結果は後から自然とついてくる」

と考えるのです。(140〜141ページより)

たしかに、こういう考え方にシフトするだけで、「早く結果を出そう」と体力と知力をムダにすり減らさずにすむかもしれません。(139ページより)

もっと「プロセス」に目を向けてみる

日本人はもともと、結果よりも「プロセス」を大事にするのではないか――。著者はそう推測しています。

たとえばチームでひとつのプロジェクトに取り組んだとき、たとえ結果がよくなかったとしても、そのプロセスが全否定されることはないはず。「みんなで力を合わせてきた。これまでのすべての仕事に、成功体験も失敗体験も詰まっているのだから、それらを次の機会に生かそう」というふうに、広い視野で考えられるからです。

大切なのは、結果を「ゼロかヒャクか」で見るのではなく、その過程に価値を見いだすこと。そうすれば、「ここまではうまくいっていた」「ここで判断ミスをしたかもしれない」、あるいは「最初からつまずいていた」など、客観的に判断ができるわけです。

そして、そうやって浮かび上がった反省点を踏まえ、うまくいったところは次回も踏襲し、まずかったところについては「次はここに注意しよう」「別のやり方でやってみよう」と改善策を立てればいいのです。

結果が出なくても、プロセスを検証して課題や注意点がわかれば、次に挑戦するときにいたずらに心配することはなくなります。

「きっとうまくいく」

と自信を持って、取り組むことができるでしょう。(143ページより)

それは、結果だけを見て一喜一憂したり、結果ばかりを求めて無理を強いたりすることを防ぐ「作法」だと著者は表現しています。(141ページより)

心や体、生活を乱すものであふれかっている世の中だからこそ、すべての人が「休息の方法」を心得る必要があると著者は確信しているそう。本書を活用し、疲れることのない生活スタイルを身につけたいものです。

著者紹介:印南敦史

作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

Source: 三笠書房

メディアジーン lifehacker
2025年11月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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