宮下草薙の宮下兼史鷹が、前置きなしで妻に「愛してるよ」と伝えた理由

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか

『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』

著者
三宅 香帆 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/文学総記
ISBN
9784106111013
発売日
2025/09/18
価格
1,078円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

[レビュアー] 宮下兼史鷹(お笑い芸人)


お笑いコンビ・宮下草薙の宮下兼史鷹さん

 かつては映画監督になりたいと考えたことがあるほどの映画好きで、普段からSFなどの小説もよく読むというお笑いコンビ・宮下草薙の宮下兼史鷹さん。

 そんな宮下さんが、「読んでいてすごく熱量を感じた」と語るのが、三宅香帆さんの新書『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』だ。その熱に押されるように、紹介されている本を思わず手に取ってしまったという。

「話が面白い人」の代表格とも言えるお笑い芸人から見た本書の読みどころ、そして「話が面白い人」になるために必要なマインドセットについて、じっくり語ってもらった。

 ***

『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』は、文芸評論家の三宅香帆さんが、本や映画などの作品をいつもどうやって読み解いて語っているか、その具体的な方法を紹介している本です。

 僕も普段から映画を観たり本を読んだりするのは好きで、映画をプレゼン形式で紹介する番組に出たりもしています。ただ、三宅さんが本書で書かれているような、物語の筋にまで詳しく踏み込んで話すことって、実はあまり経験がないんです。番組で紹介するときは、むしろ内容についてはあまり多くを語らず、つまりできるだけネタバレしないようにしながら、いかに作品の魅力を伝えるか、ということを考えているので。そういう癖がすっかり身に付いていて、本来ならもっと踏み込んで話していいはずの場所でも、内容についてはあまり触れないようにしてしまうんですよね。なのでこの本の語り口はとても新鮮でよかったです。

 三宅さん流の5つの「鑑賞の技術」が紹介されていますが、中でもなるほど、と思ったのは「比較」する方法。つまり、作品を語るときに「AとBには共通点があって……」とか、あるいは「AとBは同じジャンルだけどこういう違いがあって……」みたいに比べてみるという技ですね。たしかに「比べてみる」と面白い発見があったりします。

 ある映画について語るときに他のタイトルを出すと支障が出たりすることもあって、僕は映画同士を比べる、というのはほとんどやったことがないんですが、よくやるのは、別のジャンルのものと比べてみる、という方法です。

 例えば今年話題になった『教皇選挙』という映画がありますが、僕はあの話ってまるでボードゲームみたいだな、と思いました。

 ローマ教皇が突然亡くなり、次の教皇を決めるために世界各地から有力な候補者たちがバチカンに集められて選挙をする話なんですが、彼らはその間、外部と接触しないように礼拝堂に閉じ込められて、密室監禁に近い状態で過ごします。誰か1人に決まらないと出られないわけで、みんな早く終わりたいっていう思いもありつつ、でもちゃんとした人を選ばなきゃいけないっていうプレッシャーもある。さらに、時間の制約は特に明言されていないものの、あまりに長くかかると教皇に相応しい人がいないのではとか、変な悪評が立つリスクもあるから、そういう意味で疑似的に制限時間が設けられている感じもあります。

 つまり、制限された場所と時間、ルールの中で駆け引きが行われ、決着をつけなければいけない。それが、僕の好きなボードゲームにも似ている話だなと思いました。

 そんなふうに、「これって何々っぽい」と考えることは、普段から自分もやっているのかもしれません。ただ、作品同士の比較となると、どんな作品を引き合いに出すのかというセンスがさらに問われるし、その前提になる膨大な量のインプットがあって成せる技だな、と三宅さんの凄さも感じます。

本に対する熱量がすごい

 本の中ではこういった技術が、「こうするといいよ」と手取り足取り、懇切丁寧に書かれています。同業者も読むだろうに、こんなに手の内を明かしてしまっていいのかなと感じるくらい。思い切ったことをするなとびっくりしました。

 「時代の共通点として語る」というやり方も出てきます。「世の中がこういう情勢だから、こういう作品が流行ってるんじゃないか」みたいな分析ができるのも、豊富な知識があってのことだなと感じました。

 ただ、そういう「賢げな話」って、えてして大上段になりがちで、受け取る側はしらけたり退屈しやすかったりする。なのになんで三宅さんの話はこんなにずっと聞いていられる、読んでいられるのかなと考えていたんですが、たぶん、後ろでずっと「本が大好きだ~!」って叫んでるのが聞こえてくるからじゃないかと思います。そういう熱さみたいなものが読んでいる間ずっとあって。「本が好き」という一貫した熱量をもって語られているから、政治とか世情とか、一見遠く感じられる話も入ってきやすいのかなと感じました。

 やっぱり熱量って大事だと思うんです。この作品が好きだ! っていう。そこが冷めていると、どうしても「嘘つけ」という印象になってしまう。だから、三宅さんの技術はもちろん、この「熱さ」も大いに見習うべきだなと思います。

 たくさん読むってそれだけで大変なことだし、それを仕事にしていたら、中にはそんなに読みたくない本とか、自分にはいまいちだったと感じられる本もあるんじゃないかと想像します。それでもこの仕事を選んで、しかも読んだ中からセレクトしてこれだけの批評を書いているというだけでも、三宅さんがどれだけ本が好きかは伝わってきますよね。

新潮社
2025年11月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク