等身大人形もセックスロボットも。人類の性愛の行方は……

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無機的な恋人たち

『無機的な恋人たち』

著者
濱野 ちひろ [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784065219454
発売日
2025/10/16
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

等身大人形もセックスロボットも。人類の性愛の行方は……

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 第17回開高健ノンフィクション賞受賞作『聖なるズー』は、犬や馬などの動物を、性行為を含むパートナーとする人々に取材した作品で、大いに話題を呼んだ。アブノーマルな性愛の境界が曖昧な今、大きな問題提起となったのは間違いない。

 著者が次に選んだテーマは「人間と無機物のセックス」だ。ただ無機物が相手とはいえ、姿がヒューマノイドであることは前作よりは理解しやすいのではないか、と読み始めた。

 等身大人形を妻として25年間愛するデトロイト郊外に住む男性は、こうぶつぶつ言う。

「オーガニクス(有機体)でいるのには辟易するよ。年を取るごとに問題が出てくる。腰は痛いわ、目は遠くなるわ」

 彼は妻の他に四体の人形を持ち、それぞれにパーソナリティや関係性がある。研究のための調査でなければ、受け入れるのは難しそうだ。

 だからといって孤立しているわけではないのが面白い。人間の友人も多く社交的だ。私たちがイメージする変人や奇人ではないようなのだ。少なくとも外見的には。

 日本には初音ミクと結婚した男性がいる。初音ミクとは音声合成ソフトで、ボーカロイドのこと。個人的に使う目的なら立体物を発注していい、というガイドラインがあることを初めて知った。ユーザーは彼女の声や画像を使って自由に創作していい、つまり自分好みの最高のパートナーを作り上げることが許されている。

 等身大人形もセックスロボットも、初音ミクも無機物ではあるけれど、そこに理想の姿を投影できるなら、バーチャルだろうが木偶だろうが、かけがえのない存在になるのは理解できる気がする。

 ChatGPTなどの生成AIを親友のような存在として、なんでも相談する人が増えているという。すでに物体がなくても愛し合える時代になりつつあるとしたら、人類の滅亡はそう遠くないのかもしれない。

新潮社 週刊新潮
2025年12月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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