『ラーメン一杯いくらが正解なのか』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
インフレ時代の攻防戦「1000円の壁」の行方
[レビュアー] 田中秀臣(経済学者)

ラーメン業界「1000円の壁」は崩れるか(※画像はイメージ)
光熱費や食料品の値上げ、人件費の高騰などでインフレが身近な時代になった。物価高をどう乗り切るのか。庶民の生活も大変だが、企業もコスト高に悩んでいる。このインフレ時代に、庶民的な価格を売りにしていたラーメン業界は、いま一杯「1000円の壁」を超えるか超えないかの攻防戦の真っただ中だ。
井手隊長『ラーメン一杯いくらが正解なのか』は、インフレ時代のラーメン市場の変貌を、販売価格にこだわることで具体的に教えてくれる好著だ。ラーメンの麺、スープ、具材などの原価だけでなく、そこに反映されにくい職人たちのこだわりといった隠れたコストまで明らかにしている。本書が扱っているお店は多種多様だ。名店から街の中華まで幅広い。
横浜家系ラーメンのブランド戦略や日高屋の低価格戦略、そして二郎系の大盛りの謎まで、コストと販売価格の関係を中心にとても具体的に説明している。経済の生きた参考書として学生たちにすすめたい本だ。またラーメン「二郎」をめぐる早慶戦の話など、ユーモアの薬味も利いている。
コロナ禍以降に本格化したトレンドとして、冷凍自販機や高級な予約店、そして海外でのラーメン店経営など「1000円の壁」を超えた新しい試みは面白い。経済学者はインフレ時代に「1000円の壁」を超えられない企業は生き残れない、というかもしれないが、著者はその「壁」にこそラーメン業界固有の味を見出していてステキだ。


























