『仕事が速い人があたりまえにやっていること 努力に頼らず「すぐやる人」になる40の仕事のコツ』
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【毎日書評】要領よく働く人が、実はやっていない2つのこと
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
仕事が速い人は、少なからず「要領のよさ」を備えているもの。しかし、作業療法士である『仕事が速い人があたりまえにやっていること』(菅原洋平 著、アスコム)の著者によれば、「要領をよくする=仕事を速くする」とは、新たな知識や技術を身につけるということではないようです。
大切なのはムダを省いたり、余計な情報をカットしたりすること。しかも特別な人にしかできないわけではなく、誰でもすぐに実践でき、再現性のあることだというのです。
誰の行動のなかにも、要領のよさは隠れています。それを把握して再現性のある行動にしてしまえば、努力に頼らず「要領がいい人=仕事が速い人」になることができるんです。(「はじめに」より)
そこで著者は本書において、要領のよさを科学的なコツとしてまとめているわけです。それらはいずれも、最新の脳科学から導き出したメソッドなのだとか。
本書が目指すのは、「より速く・より大量に作業をこなすほど人間的な価値が高い」という思考からの脱却です。
なぜなら、そうした思考を捨てない限り、いつまで経っても「自分はまだまだ」と感じ、自己肯定感が低いままになってしまうからです。(「はじめに」より)
つまり、「他人や社会に急かされて行動するのが当たり前」というような幻想から抜け出し、本当の意味での充実感を得ることが重要だという考え方。
そんな本書のなかから、きょうは“9割が勘違いしている「要領がいい人」の特徴”をまとめた第1章「ちょっと待った! その「仕事が速い」、実は勘違いです!」をクローズアップしてみたいと思います。
マルチタスクについての考え方
× マルチタスクでどんどん仕事をこなす
〇 マルチタスクの場面でも「シングルタスク」で対応
(28ページより)
「要領がいい人は、複数の作業を同時進行でこなすマルチタスカーである」というような記述をよく見かけます。しかし、どうやらそれは大きな間違い。実は、要領がいい人ほどマルチタスクをしていないことが、脳科学の実験で明らかになっているというのです。
シカゴ大学のエドワード・ヴォーゲル教授らによる実験では、複数の色の棒が表示された画像を見て、「青色の棒だけを数える」という課題を行いました。
この課題では、複数の色の棒が同時に表示されたとしても、「青色の棒を探す」という目的を覚えておく力「ワーキングメモリ」が求められます。
結果、実験中の脳波の動きを見ると、正答率が高い人は、ほかの色に目を奪われず、「青色の棒だけを集中して数えられる」ことがわかりました。(28〜29ページより)
つまり、仕事が速い人(=ワーキングメモリの高い人)は「並行してたくさんのこと(マルチタスク)をするのが得意」なのではなく、「優先順位をつけ、1つずつ集中して処理する能力に長けている」ということが証明されたわけです。
脳がシングルタスクしかこなせないのは、そもそも本質が基本的に「情報選択」だから。脳は情報を選択し、そのなかのひとつのために限られた資源を使うということ。そのため、一度にひとつのことしか考えられないようにできているわけです。
時間を有効に使おうと考えて、複数のタスクを同時に行おうとする方も少なくないかもしれません。しかしそれだと、ひとつの作業の処理スピードが遅くなり、脳の疲労も大きくなるもの。その結果、どちらの作業にも集中できず、「仕事が遅い人」になってしまうわけです。
そこで忙しいときこそ、あえて脳にひとつずつ課題を当て、処理スピードを高めてみるべき。
たとえば、時間節約のためにオンラインセミナーの音声を聴きながら皿洗いをしたとします。その最中には時間を有効活用できているように感じるかもしれませんが、実際にはとても非効率。皿洗いがだらだら続き、オンラインセミナーの内容も頭に入らないということになりがちだからです。
時間を本当の意味で無駄にしないためには、皿洗いを先にすませ、そのあとでオンラインセミナーに集中するほうがよさそうです。(28ページより)
失敗についての誤解と本質
× 失敗せずに結果を出す
〇 失敗する前にやめている
(40ページより)
要領がいい人には、失敗などしないというようなイメージがあるかもしれません。ところがそれは、必ずしも正解ではないようです。正しくは、「要領がいい人は、失敗する前にさっさと見切りをつけてやめてしまう」ということなのだそうです。
たとえば仕事で指導をしているにも関わらず、後輩に聞く気がなさそうだとしたら?
思いはいろいろあるでしょうが、そんなときにくどくどと説明を続けるのは非効率的。「このやり方は合わないんだな」と、早々に見切りをつけるべきなのです。そして、「いつもはどうやっているの?」と聞いてみて、相手のやり方に合わせる作戦に変えてみるわけです。
「こうしなくてはならない」という固執を手放すことが、無駄な時間をなくし、「仕事が速い人」になる必須条件なんです。(41ページより)
固執や思い込みの背景には、最初に頭に浮かんだ考えに引っぱられてしまい、もっと適切な考え方があることに気づかなくなる「構え効果」という現象が関係しているそう。
だとすれば仕事が速い人は、「構え効果」の存在を自覚し、速い段階で解除できるということなのでしょう。(40ページより)
“仕事が速い人”になるための40種のコツを集めた一冊。すぐに実践的なことばかりなので、ピンときたものから気軽に試してみてはいかがでしょうか。そうすれば、仕事の進め方を改善できるようになるかもしれないのですから。
著者紹介:印南敦史
作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: アスコム


























