『ザ・ロイヤルファミリー』
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早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』ドラマ化記念鼎談 妻夫木聡×目黒蓮×早見和真「ファンファーレが鳴っている」
[文] 新潮社

目黒蓮 1997年東京都生まれ。 「Snow Man」メンバー、俳優
芝居に挑む演者は撮影の裏側で何を思い、どのようなやり取りをしているのか?
そして、映像化の元となる物語を生み出した原作者は、どんな気持ちで制作の現場を見つめているのか?
こうした現場のキャストやスタッフだけが知る内幕を明かし、作品への理解が深まる対話をしたのが、TBS系日曜劇場で放送中の「ザ・ロイヤルファミリー」の原作者・早見和真さんと、出演者の妻夫木聡さん、目黒蓮さんの三人だ。
主人公の税理士・栗須栄治とワンマン社長・山王耕造との出会いから、馬主一家の波乱に満ちた20年間の軌跡を紡ぐドラマの撮影現場では、どんな思索とやり取りが生まれていたのか?
(全4回の第3回)
※本対談は原作者の早見さんが第一話放送後の10月中旬に撮影現場を訪問して行われました。

左から目黒蓮、妻夫木聡、早見和真
怖さを上回るわくわく感
妻夫木:僕は早見さんとの関係もあった上で、素晴らしい原作で主役に立たせてもらってすごく光栄なんだけど、目黒くんは普段、主役をやることが多いよね?
目黒:最近はそうですね。
妻夫木:ひとつ聞きたかったのは、『ザ・ロイヤルファミリー』に出る決め手みたいなものって何かあったの? 顔合わせの日に「この役に捧げたい」というくらいの気持ちになれたのは、何が一番の理由なのかなって。
早見:それは僕も聞きたいことでした。主演のオファーが殺到しているであろう目黒さんが、いま脇役をやる思いを知りたいなって。
目黒:最近、ありがたいことに主演の立場をいただけることも多いんですけど、ジュニア時代の七年くらいは本当に誰にも求められていなかったので……。自分を求めていただけることにすごく喜びを感じるんです。お話をいただいたら、まず自分で原作を読むようにしていて。
早見:へぇ、そうなんですね。
目黒:もちろん、スケジュール的にどうしても難しいことはありますが、『ザ・ロイヤルファミリー』を読んだときに、心が大きく動いたんです。それって、すごく大事だなって。同時に、自分はまだまだ学ばなくてはいけない立場なので、妻夫木さんや佐藤浩市さんをはじめとしたキャストのみなさんから、いろいろなものを吸収したいと思ったんです。お芝居を学びたい、拾えるものは全部拾いたいという気持ちと、原作を読んで自分が感じたように、映像を通して視聴者のみなさんの心を動かしたい。その気持ちだけだった気がします。だから、主役かどうかとか、あまり考えていなかった気がします。
早見:以前、ある小説の映像化の企画ですごくいいキャスティングが決まっていて、最後のお一人として、ある若い役者の方に受けてもらえるかどうか、という状況になったんです。でも、最後の最後にお断りされてしまって。数年後、その方と会う機会があって「実はあのとき逃げました」「あの役者さんたちと戦うのが怖かった」と言われたことがあるんです。その意味では今回も、妻夫木聡、佐藤浩市をはじめ、本物たちがうごめいている座組じゃないですか。
目黒:そうですね。
早見:まだ若い目黒さんの中に、そこに対する恐怖みたいなものはなかったですか?

早見和真 1977年神奈川県生まれ。作家
目黒:まったくないと言ったら嘘になります。でも、これを逃したら学べる機会はないという気持ちの方が大きかったですね。人生一回きりだし、たとえどうなろうが、そこに飛び込んで一生懸命やることのわくわく感の方が勝るのかな、という思いでした。
早見:なるほど。妻夫木さんは若い頃にそういうことってありましたか? 「この現場は怖いな」みたいな。
妻夫木:怖い……。ないかな。「怖い」はないですね。
早見:本当に?
妻夫木:僕はみんなが気を遣うような年上の方に対しても、「いやいや、何言ってるんですか(笑)」って突っ込めるタイプなんです。根っからの末っ子気質というか。ずっと年上の人とばかり接してきたから、その方が落ち着くんです。
目黒:それはすごく思いました。佐藤浩市さんとご一緒されている雰囲気を見ていて、たぶん妻夫木さんの中に独特の距離感があるんだろうな、と。
妻夫木:さっきの「怖いかどうか」の話に戻れば、僕も目黒くんと同じで、好奇心の方が勝っていましたね。「このチャンスを逃したら、もう絶対に次はない」と思っちゃうんです。みんなが一目置く大物の方がいるときこそ、嬉しくて尻尾を振りまくる犬みたいになっちゃう感じがありました。
早見:妻夫木さんも、主役か脇役かはそれほど関係なかったですか?
妻夫木:ないですね。『ウォーターボーイズ』(二〇〇一年公開)で注目していただいて、主演を張らせてもらうことも多かったですけど、当時のマネージャーとは「脇役もやりたいね」とよく話していました。主役以外も積極的にやってきたんですよ。
早見:たしかに。じゃあ、作品ありきで選ぶんだ。主役かどうかではなく。
妻夫木:そうですね。

妻夫木聡 1980年福岡県生まれ。俳優
恐れない自分でありたい
妻夫木:今回もみなさんが「座長」と言ってくださるんですけど、僕はその言葉があまり好きじゃないんです。二十代後半の頃、「座長」という役割を全うしようとしすぎて、本来役者にとって大事なことに集中し切れていなかったと気づいた瞬間があるんです。役者自身がいい人だろうが、悪い人だろうが、いい芝居をすれば、それで勝ちなんですよね。それがお客さんにとって一番なんだから、座長かどうかよりも芝居が第一。要するに、作品のことを最優先に考えないとダメなんだって。それ以来、「座長」という立場について考えるのはやめたんです。
早見:だけど、妻夫木さんほど「座長感」のある人もいなくないですか?
目黒:今回、僕がもうひとつ学んでいるのが、カメラが回っていない時の妻夫木さんの立ち居振る舞いなんです。もちろん、お芝居の最中に学ぶことはたくさんあるんですけど、本番前の過ごし方だったり、周りのスタッフの方やキャストの方々との接し方だったり……。
妻夫木:え、そんなところまで見てるんだ(笑)。
目黒:僕にとっては発見ばかりで、今後、別の現場で「こういうオレでいるのもありだぞ」と思えるようになって。「いい芝居をするために、現場でどう在ればいいか」という学びになっています。
早見:それが、「座長感」ですよ。
妻夫木:そうなのかな。
早見:僕の思う「座長」が何かというと、まさにみんなの中に立って、どれだけ作品に対して奉仕しているかだと思うんですよね。だから、妻夫木さんがいま話したことと、実は何ら変わらない。やっぱり妻夫木さんは作品に懸けられる人なんですよ。
妻夫木:そうですかね……。でも、たしかに作品のためなら自分が悪者になっても動き回っちゃうタイプではあるかもしれないですね。
早見:妻夫木さんと脚本について話すこともあるのですが、「本当に見事だな」と思うのは、妻夫木聡が輝くための意見がひとつもないんです。その逆で、「いまの形だと栗須が立ち過ぎて、耕一が立たない。ここは耕一が魅せる場面だと思う」みたいな、作品本位の話ばかりなんです。
目黒:すごく共感します。僕もそういう人でありたいなって。いまのお話とは少し違うんですけど、視聴者に嫌われるような役を演じることを恐れる人もいる、という話を聞いたことがあるんです。僕はそれを恐れない人でありたいと思うんですよね。その役を引き受けた以上、視聴者に嫌われることこそが正解で、むしろ嫌な言葉や感想がくればくるほど、いい芝居ができたと思えるはずなんじゃないかって。
妻夫木:そうだね。僕もそう思うな。
目黒:そういう役こそが、作品の幅を広げて、トータルのおもしろさにつながるはずだから、恐れずに演じられる人でありたいな……というのが、妻夫木さんのお話に少し近い気がしました。
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【第4回】では、目黒のクランクイン初日が異例の撮影方法になったという秘話をお届けする。
【第1回】では出演者とスタッフが原作者と作り上げた一体感、【第2回】では妻夫木聡と目黒蓮の間に生まれた絆を公開している。


























