「蓮がすごく良くて、泣けてきちゃって…」異例の撮影方法となった目黒蓮のクランクインを妻夫木聡が語る TBS系日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』の舞台裏【第4回】
対談・鼎談
『ザ・ロイヤルファミリー』
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早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』ドラマ化記念鼎談 妻夫木聡×目黒蓮×早見和真「ファンファーレが鳴っている」
[文] 新潮社

目黒蓮 1997年東京都生まれ。 「Snow Man」メンバー、俳優
TBS系日曜劇場で放送中の『ザ・ロイヤルファミリー』では、仔馬を気遣うために通常とは異なる撮影手法がとられていたそう。特に、目黒蓮さんのクランクインの際は、現場に到着してから「よーい、スタート!」の声もかからないままカメラが回り始めた……。
そんな中、主演の妻夫木聡さんは目黒さんのためにある行動に出たという。こうした現場の内幕を、『ザ・ロイヤルファミリー』の原作者・早見和真さんと、出演者の妻夫木聡さん、目黒蓮さんの三人が語り合った。
主人公の税理士・栗須栄治とワンマン社長・山王耕造との出会いから、馬主一家の波乱に満ちた20年間の軌跡を紡ぐドラマの撮影現場では、どんな思索とやり取りが生まれていたのか?
(全4回の第4回)
※本対談は原作者の早見さんが第一話放送後の10月中旬に撮影現場を訪問して行われました。

左から目黒蓮、妻夫木聡、早見和真
静かな、優しい、熱いハグ
早見:目黒さんのクランクイン初日って、どういう状況だったんですか?
妻夫木:僕たちは先に北海道で撮影をはじめていたんですけど、耕一が牧場で仔馬とはじめて触れ合うシーンが、目黒くんの最初の撮影になったんです。仔馬はナーバスだから慎重に撮影しなくてはいけなくて、大きな物音もダメだし、カメラもだいぶ遠くから望遠で撮ることになって。だから、クランクイン当日なのに、「中条耕一役の目黒蓮さんです!」という紹介や挨拶もないまま、現場に着いてすぐに撮影が始まったんです。
早見:なるほど。
妻夫木:北海道に着いて、最初からいきなり耕一になり切るなんて、無理じゃないですか。あとから撮影に入ることでアウェイ感を感じる部分もあるだろうし。だから、一気にホームになってほしくて、少しでも心を通わせたいなと思って、その場でハグさせてもらったんです。
目黒:おかげでホームになりました。
妻夫木:「ちょっとハグしていい?」って言ってね(笑)。
目黒:すごく心強かったです。その時の「はじめて感」をいい意味で大事にしていこうと思えるような……。静かな、優しい、でも、熱いハグでした。
妻夫木:ハグだけして、そのまま牧場の中に入って、カメラがどこで回っているのかもわからないまま本番が始まって。僕と、(松本)若菜ちゃんと、目黒くんの三人が柵の中にいて、仔馬はしばらく怯えて近づいて来なかったんだけど、「手の匂いを嗅がせて、落ち着かせて。だんだん近寄ってくるから」って話していたら、最初に若菜ちゃん、次に僕のところに来て、最後に蓮のところにも来てくれて。「あ、来た来た。良かった」と思って見ていたら、その時の蓮がすごく良くて、泣けてきちゃって。
早見:それが最初の予告で使われていた目黒さんと馬とのシーンなんですよね?
妻夫木:そうです。
早見:素のままの目黒さんが馬と触れ合っている感じがしました。馬と接するのもはじめてだったんですか?
目黒:ほとんどはじめてでした。
妻夫木:だからかな。蓮と仔馬のシーンは「あ、命と命だ」って感じたんです。
早見:わかる。目黒さんが心がふわっとほどけたような表情をされていますよね。
妻夫木:そうそうそう。若菜ちゃんと隣で見ていて「うわ、このシーンはやばいかも」って、親みたいな気持ちになっちゃって。
早見:僕はその次の日に見学する予定で夜に日高に入ったんです。結局、雨で翌日の撮影はキャンセルになっちゃったんですけど、そのおかげで妻夫木さんと夕食をご一緒することができて。妻夫木さんが「今日、すごいシーンが撮れた気がする」と言っていたのがまさにそのシーンでした。でも「カメラが遠すぎて、ちゃんと撮れてるのかなぁ」って。
目黒:そう思うレベルでカメラが遠かったですよね。
妻夫木:蓮から見て僕の背後にはカメラはなかったから、僕が見た表情は確実に撮れていないんだけど、仔馬と心を通わせた後に、僕の方に目を向けた耕一の顔がもう「愛おしすぎる! マジでやめてくれ! 泣ける泣ける!」って。
早見:あはは(笑)。でも、僕の思う耕一はそういう人です。
妻夫木:そうなんです。ずっと脚本を読んできて、耕一はなかなか心を開いてくれないじゃないですか。僕は耕一を支える栗須の目線だから、蓮の最初の撮影ではあるんだけど、本当の意味での耕一の笑顔をはじめて見た気がしたんです。
早見:うんうんうん。
妻夫木:だから、なおさら心がキューンとなって。もうたまらないって。
目黒:ただ、あのシーンを終えた後に、一気に不安になったんです。
早見:どうして?
目黒:あれ、この作品って、段取りもテストも何もなしで撮るのかなって。
妻夫木:そうだそうだ、あの時も言ってた。「この撮影って、ずっとこんな感じで進むんですか?」って蓮に聞かれて、「違う違う、テストもいっぱいやるし、段取りもちゃんとやるし」って。
目黒:それを聞いて、「あぁ、良かった」と思いましたもん。
妻夫木:「『用意、スタート!』もないんですか?」って蓮が言うから、「あるあるある!」って(笑)。
早見:あはは(笑)。でも、その撮り方がいい方に転がっているシーンですよね。
妻夫木:はい。贅沢だったよね、あの時間はね。
目黒:本当にそうですね。

妻夫木聡 1980年福岡県生まれ。俳優
「Snow Man」阿部ちゃん事件
目黒:ひとつ嬉しかったのが、「Snow Man」のメンバーも第一話を観てくれて、メンバーの一人の阿部(亮平)ちゃんが「第一話では蓮の正体、明かされなかったね。すごく良かったし、感動したし、ナレーションも良かったよ」と言ってくれて。
早見:嬉しいですね。
目黒:たまたま第一話の次の日にグループのお仕事があって、その合間に、僕だけドラマの宣伝動画を撮る必要があったんです。その動画を撮っていて「僕が演じる役は、山王耕造さんの隠し子の中条耕一です」と言った瞬間に、阿部ちゃんがその場を通りかかったんです。
妻夫木:うわ、最悪!(笑)
目黒:阿部ちゃんが口を開けたまま固まって、目が点になっちゃって。
妻夫木・早見:あはは(笑)。
目黒:でも、それぐらい、のめり込んで観てくれている人がいるんだな、というのがすごく嬉しくて。それを今日、早見さんにご報告したいと思っていたんです。
早見:ありがとうございます。伝わりました。

早見和真 1977年神奈川県生まれ。作家
続編の可能性は
早見:取材でお世話になった馬主さんで原作が大好きな方がいて、単行本が出たときから「血の継承の物語を書いた以上は、続編を書かなきゃダメなんじゃないの?」とずっとおっしゃってくれていて。だけど、僕の中で『ザ・ロイヤルファミリー』はすでに完結しているから、「一万部買い取ってくれない限りは書きません」みたいなことを言っていたんです。
妻夫木・目黒:あはは(笑)。
早見:そうしたら「一万部くらいならまぁ何とか……」みたいなことをゴニョゴニョとおっしゃっていて。
妻夫木:いやいやいや、おかしい、おかしい(笑)。
早見:そんな中で今年、競馬界にあるニュースが流れたんです。そのニュースを知った時に、はじめて「あれ、これを下敷きにさせてもらえれば……」って、続編のイメージが湧いたんですよね。
目黒:うわぁ。
早見:その続編の物語では、耕一さんが主人公で、栗須さんが脇役に回っているかもしれません。まだ、ボンヤリとしたイメージしかないんですけど、続きの物語が映画になったら美しいなって……。
妻夫木:あ、ちょっと待ってくださいね。(カバンからタブレットを取り出して)うちの目黒はスケジュールが結構埋まっていてですね……。まぁ、早くても二〇二八年ぐらいかな。
目黒:秘書の栗須さん役が入り過ぎちゃってる(笑)。
早見:(笑)。もちろん、映像ありきで原作を書くことはないですけど、そんなことが起きたら幸せだなって。
妻夫木:たしかに。そんなことになったらすごいですね。
早見:なので、最終回までにすごい視聴率を取っておいてください、ということを今日お伝えしようと思っていました。
妻夫木:ええっ! もう収録が終わっていたら「そう願うばかりですね」とか言えますけど、今日から力んだ芝居になったらどうするんですか! 急に顔芸とかはじめたりして……。
目黒・早見:あはは(笑)。
早見:でも、そんなイメージもどこかに持っていてもらえたら嬉しいです。
妻夫木:もし続編が出るなら、絶対に読みたいです。
目黒:読みたいですね。
妻夫木:願わくば、映像化してもらいたいですよね。
早見:北海道の生産牧場で、栗須さんと耕一さんの二人が深刻そうに話している場面から始まるんです。そこには朝もやが立ち込めていて、神聖な空気が流れていて……って、そんなイメージがあるんです。
妻夫木:やばっ!
目黒:すごい。なんかシーンがイメージできますね。
早見:まだどうなるかわからないですけどね。でも、本当に書けたらいいなとは思っています。
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【第1回】では出演者とスタッフが原作者と作り上げた一体感、【第2回】では妻夫木聡と目黒蓮の間に生まれた絆、【第3回】では目黒蓮がオファーを受けた理由を公開している。


























