『偉人 大久保利通』
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【聞きたい。】真山知幸さん 『偉人 大久保利通』
[文] 産経新聞社

真山知幸さん
■不透明な時代の指針にも
偉人研究家として60冊以上ある著作のなかで初めて一人の人物の生涯にじっくりと迫った。幕末の志士で、明治政府に君臨した大久保利通(1830~78年)。一番好きな偉人として、「東洋経済オンライン」で長期連載したものを書籍化した。
「独裁者、冷酷、融通が利かない…と悪いイメージも多いですが、人の話をきちんと聞く、部下にも丁寧に接するといった一面も。何より一つ一つやれることをやり、少しでも今日よりよい明日にするという実務力を持っていた」
幕末、公家と衝突したり、朝廷と幕府の間で右往左往したりと失敗や挫折を繰り返しながらも「大久保に『絶望』の2文字はない」。強い信念と粘り腰、あきらめない泥臭さが武器。維新後、廃藩置県を断行し、内政を仕切り、欧米諸国を視察。不平士族の佐賀の乱で政敵・江藤新平をさらし首にし、盟友・西郷隆盛の西南戦争参戦に苦悩…。
外交でも「理不尽な相手の要求には一切屈せず、議論を丁寧に展開しながら、自国の主張を相手に認めてもらうまで、対話を繰り返す」姿勢を貫き、台湾出兵(明治7年)をめぐる清国との和平交渉で成果を挙げた。
「イメージが悪いのは、権力の中枢にずっといたことが大きい。いろいろなものを犠牲にし、反感も買ったが、私利私欲でなく、日本をよくしたいという大きな目標のためだった。現場にい続け、現実を踏まえ、変革を進めた生き方にもひかれます」
一方、本書では「葛藤を書きたかった。紆余(うよ)曲折、失敗や格好悪いところまで、思考のプロセスなどを書簡、人とのやり取りで丁寧に紹介した」。西郷、徳川慶喜、岩倉具視、木戸孝允らにもふれ、リーダー論や人材育成、折衝術を導く。先行きが見えにくい今の時代は幕末に似ているとし、「ビジネスパーソンの役に立てば」と指針にも。
自身、独立前の業界誌編集長時代、難しい決断を迫られたとき、「大久保ならばどうするだろう」と考えていたという。本書はその集大成であり、「代表作」。小説やドラマのように引き込まれる全336ページ。渾身(こんしん)の一冊だ。(草思社・2090円)
三保谷浩輝
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【プロフィル】真山知幸
まやま・ともゆき 偉人研究家。昭和54年、兵庫県生まれ。同志社大法学部卒。業界誌出版社に勤めながら偉人研究を続け、令和2年に独立。著書に『ざんねんな偉人伝』『偉人名言迷言事典』など。


























