遅れるリニアの現地をダークに案内

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リニアは南アルプスをくぐり抜けることができるのか リニア中央新幹線ダークツーリズムガイド

『リニアは南アルプスをくぐり抜けることができるのか リニア中央新幹線ダークツーリズムガイド』

出版社
山と溪谷社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784635510943
発売日
2025/11/04
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

遅れるリニアの現地をダークに案内

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 急がれる地下高速鉄道の新設。無理を重ねた難工事のなか、爆発事故で地下120メートルの湖底に多くの人が取り残されて……。

 というのは40年近く前のアメリカ小説、『湖底トンネル爆発!』。技術と人間の恐ろしさが骨身に応(こた)えるのは書き手が、あの「タワーリング・インフェルノ」の原作を担った手練れで、超高層ビル火災のみならず原発事故や核ミサイル誤射等々を説得力強く描き続けてきた理系作家ペアだから。

 そんな懐かしいフィクションを思い出したのが10月の末。開業が延び延びのリニア中央新幹線、その総工費が当初の5・5兆円から倍増する見通しが発表されたからですが、同じころ、新しいノンフィクションにも出会った。『リニアは南アルプスをくぐり抜けることができるのか』です。

 著者の宗像充は自然モノから社会モノまで幅広く手がけるライターで、リニア取材をきっかけに現地に移住。大地溝帯(フォッサマグナ)を横切る長くて深い南アルプストンネルが口を開ける長野の大鹿村を軸に10年以上、工事と地元を見つめてきた。

 続く事故、壊れる自然、立たない見通し、報じないメディア、割れる地域――そこで暮らす宗像の思い入れも込められたこの本は決して読みやすい読み物ではない。が、品川-名古屋を40分で翔るというリニアを待ち焦がれてるようなアナタこそ、ご乗車前にぜひ、ご一読を。読みやすい読み物である『~爆発!』とのセットがお薦めです、閉所恐怖症でなければ。

新潮社 週刊新潮
2025年12月11日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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