幸せより「不幸じゃない状態」を目指すのはむなしい? “平凡に暮らすことが一番難しい”と悟った30代著者による韓国ベストセラー

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大人の幸せは静かだ

『大人の幸せは静かだ』

著者
テス [著]/中川 里沙 [訳]
出版社
かんき出版
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784761278311
発売日
2025/10/08
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「不幸じゃない状態」って幸せ? 人生をケチらない韓国ベストセラー

[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)


※画像はイメージ

 著者は韓国の“平凡に暮らすことが一番難しいということを悟った30代後半”。「平凡に生きる」という豊かさにスポットライトを当てている。世代はドンピシャだけど国が違うと文化の違いで感覚が異なったりするかな? と心配になったけれど、知らない言葉にはしっかり注釈がつくのでご安心を。

 帯に『韓国で20万人が共感!』とある通り、目次を見るだけで気になるフレーズがずらりと並んでいる。いきなり、「思いやりは体力からつくられる」という今の私にめちゃくちゃ刺さる話が……私は20代で体力がついてから優しくなったと思う。そして、体力回復がうまくいっていない30代後半の今、明らかにギスギスしている。ぐっすり眠れた日は余裕を持って人に優しくできるが、疲れている時は些細なことでイライラしてしまう。

 著者は優しさの総量を増やすために筋トレを始めるのだが、誰かに肉体美を見せつけるためではなく、人に優しくできる体力をつけるために体を鍛える、という行為があたたかい。「気分が性格にならないように」というのも更年期が近づいてきた今、肝に銘じたいトピックスである。

 誰もが羨む眩い幸せより、「不幸じゃない状態」を目指すなんて虚しいのだろうか? そんなことはない。負のスパイラルで自分は幸せになる資格などないと思ってしまう前に、そこから抜け出す方法を知っておくのは良いことだ。

 著者のおばあちゃんがいつも良い話をしてくれる。「あたしは最後に笑う人生がいい人生だと思ってた。でもね、いい人生ってのはしょっちゅう笑う人生だったのさ。だから、人生はあまりケチらないほうがいいよ。」人生をケチる感覚というのはなんだかわかる。いつか来るはずの幸せもいいが、何のために働いているんだっけ? となる前に、自分を信じてたっぷり尽くしてあげよう。不幸を吹き飛ばし自分を取り戻す一冊だ。

新潮社 週刊新潮
2025年12月11日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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