多いときは5作品を同時並行で書く 執筆3年目でネット小説大賞を受賞した功野涼しの創作方法

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姫プレイ聖女

『姫プレイ聖女』

著者
功野涼し [著]
出版社
ワン・パブリッシング
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784651205632
発売日
2025/10/23
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ワンパブが初のラノベ出したってよ!「ネット小説大賞」受賞作『姫プレイ聖女』誕生秘話

[文] ワン・パブリッシング


小説を書き始めて約3年で「ネット小説大賞」を受賞した功野涼しさん

ネット小説の投稿を始め、3年目にして日本最大級のライトノベルの文学賞である第11回「ネット小説大賞」(クラウドゲート主催)を受賞した功野涼しさん。

会社員の功野さんは読書経験もさほど多くなく、小説家志望でもなかった。さらに、受賞作となった『姫プレイ聖女』は、コロナ禍に暇つぶしで書き始めた作品の一つだという。

そんな功野さんが生み出したのは、“聖女”と勘違いされた銀髪美少年が、やさしさと美貌で人々の心を惹きつけながら、魔族や災厄に立ち向かう新感覚のファンタジー小説だ。

「自分でも書いてみたいな」というありふれたきっかけから小説家デビューを果たした功野さんに、書籍化の連絡を受けたときの驚きや作品が生み出されるまでの過程、今後の展望などを聞いた。

なりすましからの連絡では!? 受賞の報をすぐに信じられなかった理由

――初の書籍出版おめでとうございます! 最初に書籍化の連絡を受けたときの率直な感想を教えてください。

「『信じられない』が真っ先に思った感想です。なりすましからの連絡かも? と疑ってすらいました。

というのも、版元となる出版社のことを調べたら、ミステリーマガジン『ムー』を出している会社だとはわかったんですが、小説を出版されていなかったので、これは怪しいぞと(笑)。その後、担当編集さんから直接連絡をいただいて、ようやく実感が湧いてきました」

――『ムー』も含めて、それは確かに怪しいと思っちゃいますね(笑)。その後、書籍化に至るまではいかがでしたか? 初めての経験ばかりで、大変なことも多かったのではないでしょうか。

「改稿作業っていうんですかね、編集さんから大量の修正指示が入った赤字をいただいて、それをもとに原稿を修正していく作業が、とても勉強になりました。これまで、自分が書いたものを見直すことはほぼなかったですし、誰かから細かく指摘されたこともなかったので。

そもそも独学で執筆を始めたので、小説の書き方の基礎がわかっていなかったんです。編集さんから提案してもらう表現方法とか、文章の校正の仕方など、日々勉強でした。作業自体は大変でしたが、すごく楽しかったです。以降、作品を書くときは、教えていただいたことを意識するようになりました」

――まさに、編集者と二人三脚で作品を仕上げられたのですね。改稿作業の中で、特に印象的だったことはありますか?

「登場人物の名前についてです。この世界に生きている人は全員、それぞれに大なり小なり役割があって、明確なモブキャラはいないと私は考えます。ですので、最初の原稿では、ほんの数行しか登場しないキャラクターにも、すべて名前をつけていたんですね。ただ、それだと読者が名前を覚えきれず混乱してしまうのでは、と編集さんからアドバイスをいただき、数人ですが名前を削りました。

自分の想いを貫き通すことは大事だけど、やりすぎると押し付けのようになってしまう。読者の方に楽しんでもらうことを第一に考える、という視点の重要さに気づけたので、名前以外の部分も要所要所で修正しました」

暇つぶしから小説家に!? 多趣味な凝り性がついに見つけた天職

――功野さんが小説を書き始めたのは、いつ頃ですか?

「いまから5年くらい前です。その頃はちょうどコロナ禍で、すごく暇だったんです。いろいろなアニメやドラマをひたすら見続けているうちに、アニメの原作の中に『ネット小説』(インターネット上で公開されている小説)が多くあるとわかったんです。

そこから、いろいろなサイトに掲載されている『ネット小説』を読むようになり、自分でも書いてみたいな、と思って投稿を始めたのがきっかけです。『ネット小説大賞』に応募したのも、自分が書いた作品が書籍化されたら楽しいだろうな、くらいの気持ちでした。小説を書き始めて3年ほどした頃のことです」

――小説家になりたいという願望はあったのでしょうか?

「いえ、まったく。そもそも小説を書いたこともなかったですし、読書も一年に2~3冊読めばいいかな、くらいの人間だったので。ただ、凝り性なので、一度始めたらトコトン没頭してしまう癖があるんです。

これまでは、釣りにハマったり、バイクに乗ったり、コーヒーを淹れるのに夢中になったり。コーヒーをひとしきり極めたあとは、コーヒーに合うお菓子を作り続けていた時期もありました。

今回の小説も、最初はコロナ禍の暇つぶしくらいの気持ちで始めましたが、いつしか書くことにすっかり夢中になり、いまでは生活の一部みたいになっています。これまでの趣味と比べるとずっと長く続いていますし、これからも続きそうです」

――普段はお仕事をされているとのことですが、どのように執筆時間を捻出されているのですか?

「毎日、仕事が終わったあとや夕食後の1~2時間くらいです。できるときに一気に書き上げています。アイデアに関しては、普段から『なにか作品に繋がることがないかな』と考えていて、思いついたらすぐにメモ用紙に書き留めています。それをあとから繋ぎ合わせて、作品に盛り込んでいる感じです」

――常にメモ用紙とペンを持ち歩かれているのですね。執筆はご自宅がメインですか? 気分転換に別の場所で書くこともありますか?

「基本は自分の部屋ですが、たまにリビングに移動して書いたりもします。あとは、車の中とか。パソコンを使わずに、適当な用紙に手書きでストーリーを書き進めていくと、結構捗るんですよ。

タブレットも持ってますが、手書きの方が多いですね。手を動かしていると、いろいろインスピレーションが湧いてくるんです。その用紙を見ながら、あとでパソコンに打ち込んで清書しています」

プロットなしで同時執筆!? 独自の創作スタイルの秘密とこれから

――功野さんの作品は、読んでいる間ずっと気分が良く、ずっと楽しい気持ちになれるなと感じます。作品全体に“やさしい世界観”が流れていると言いますか……。

「ありがとうございます。今回書籍化された作品も、強い主人公がすべてを解決していくわけじゃなくて、登場人物みんなで力をあわせて、絆を深めながら魔族や厄災に挑んでいく、という点がこだわりです。出てくる人々のやさしさに触れながら楽しんでもらえたらいいなと思って、いつも作品に取り組んでいます」

――先ほどの「明確なモブキャラはいない」という想いにも通じますね。『姫プレイ聖女』は「異世界」や「聖女」がテーマですが、最初から決めていたのでしょうか?

「そうですね、『聖女』について書きたいとは思っていて、それが男の娘(外見が女の子のようにかわいらしい男性のこと)だったらおもしろいかな、というアイデアから始まりました。

ただ、私は基本的にプロットを書かないんですよ。ざっくりしたゴールは決めますが、その過程は書きながら考えていきます。

さらに言うと、ひとつの作品を完結まで書き続けるんじゃなくて、最低でも2つか3つの作品を同時並行で書いています。多いときは5本くらいを進めていますね。何かエピソードを思いついたとき、その物語には入れられないけど、別の物語で取り入れたらおもしろいかな、という感じで、新しい話を書き始めます。だから、プロットはあってないようなものなのかもしれません」

――それはすごい! 『チェンソーマン』の原作者・藤本タツキさんは、中学時代から脳内で雑誌を作り、常に約7本の漫画を同時連載していた、というエピソードが知られていますが、それに通じるものがある気がします。最後に、今後の展望を教えてください。

「これからも、自分の頭の中にある物語を言語化して、誰かに届けていけたらいいなと思います。書籍を出せる機会をいただけるなら、どんどん出してみたいです。小説で生活をするとなると、ちょっと難しいと正直思いますが、本業と副業が入れ替わることだってあり得るかなと思っています。

まずは、今回の本が売れないと、関わってくださった皆さんに悪いので……応援していただけたらうれしいです」

 ***

功野涼し(こうの すずし)
コロナ禍をきっかけにネット小説の投稿を始める。はじめは王道ものを書こうとしていたが、いつの間にか男の娘の物語が増えて今に至る。第11回ネット小説大賞にて受賞し、書籍化デビューを果たす。九州生まれ、趣味はおもしろそうなものに触れること。広く浅くたまに深くがモットー。

取材・文/水谷映美

ワン・パブリッシング
2025年11月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ワン・パブリッシング

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