会話が途切れない人が密かにやっている「ネタの拾い方」

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人前で話したくなる声と話し方

『人前で話したくなる声と話し方』

著者
下間 都代子 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
語学/語学総記
ISBN
9784534062321
発売日
2025/11/21
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】会話が途切れない人が密かにやっている「ネタの拾い方」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

今すぐ!思わず!もう一度! 人前で話したくなる声と話し方』(下間都代子 著、日本実業出版社)の著者は幼いころ、最愛の母からこう言われていたのだそうです。

「都代子は何が言いたいのかわからないわ」(「まえがき――自分の想いを言葉と声に乗せて話せる喜び」より)

子どもにとってみれば、少なからずショッキングなことばかもしれません。しかしそれでもトラウマにならず、アナウンサーとして活動できているのは、「人前で話すことをやめなかったから」なのだとか。

具体的には、“どうすれば要領よく、わかってもらえるように話せるのか”と子どもなりに考えて「工夫」し、積極的に「声を出すこと」を心がけたというのです。

そうしたことの繰り返しが経験となり、人前で話すことへの抵抗をなくしたわけです。また、そうすることで、話す内容にもまとまりを持たせることができるようにもなったようです。

つまり本書は自らの経験を軸として、「人前で話すことが苦手な人」「なにを話したらいいのかわからない人」のために書かれているということ。人前で話すときに迷わずに済むために役立つ「スピーチマップ」など、実用性の高いアイデアを随所に網羅した構成も魅力的です。

ところで話をする際には、実際に話す前のハードルとして話題づくり、すなわち「ネタ」の見つけ方に四苦八苦するものでもあります。それが、話すことへの苦手意識へとつながっていくこともあるでしょう。

そこで、第2章「これは!と心をつかむ『ネタ』の見つけ方」のなかから「常日頃から心がけたい『ネタメモ5選』」に注目してみたいと思います。気の利いたことを話すためには準備が必要なので、「ネタメモ」を活用するべきだというのです。

大切なのは、手帳にでもスマホにでも、とにかくメモしておくこと。そして著者が実践しているのが、ここでご紹介する「ネタメモ5選」なのです。

① きょうの「印象日記」をつける

私は毎日、ブログに、その日、一番印象に残ったことをピックアップして書く。これを、私は「印象日記」と呼んでいる。

それをいきなりやれといっても難しいと思うので、まずはその日、印象に残ったことをひと言でまとめる習慣を付けよう。その際、印象に残ったことにタイトルを付けるようなイメージで書いておくと後日、思い出しやすくなる。

例えば「やさしさに救われた日」とだけ書いておくと、自分が接客でピンチに陥ったとき、先輩がすかさず助けてくれて上手く対応できた、など、具体的なことを思い出すことができる。(117ページより)

このとき大切なのは、「あのとき先輩は、助けないといけないと思っていたのではないか、と私は思った」など、ピンチを救ってくれた人の思いを話に盛り込むこと。そうすれば、ほかの人にも役立つ内容となるからです。(117ページより)

② 他人の話を「自分ごと化」する癖をつける

ここで著者が勧めているのは、ニュース、友人の体験談、読んだ本などを「もし自分だったら?」と置き換えてみる癖をつけること。

私は平日の朝、音声アプリのClubhouseを使ってライブ配信をしている。ビジネス書の著者をゲストに、インタビューをしているのだが、この番組のリスナーさんは、「自分事」にするのが非常に上手い。著者の話す経験談を聞いて、「私の場合はこうでした」と、すかさずチャットにコメントしてくる。

私もリスナーさんに呼びかける。「自分だったらどうするだろう? と考えてみてね」(119ページより)

他人の話や小説の話だったとしても、そこに自分の視点を加えれば「もらいもの」の話ではなく「自分の話」に転換できるというわけです。(119ページより)

③ 「コミュニケーションインタビュー」を日常に取り入れる

著者いわく、インタビューは「自分の体験と相手の体験を融合させられるすばらしいネタ集めの方法」。SNSでライブ配信しているような人でなくとも、誰にでもできるものでもあります。

「インタビュー」というと、ちょっと大袈裟に感じるなら「体験談を参考にしたいので話を聞かせて欲しい」と頼めばいいし、わざわざ時間を作って欲しいとお願いせずとも、一緒に食事をしているとき、仕事の帰り道など、隙間の時間を使い、自分から相手に何かと質問を投げかけるだけで、いい話が聞けることもある。これも一種のインタビューだ。(120ページより)

自分の経験や考えていることを言語化することは、相手にとっても有効。頭のなかを整理するいい機会になるからです。つまりネタの情報収集ができ、相手も喜んでくれる有益な機会なのです。(120ページより)

④ 「ネタ探し目線」で歩く

いつもの散歩道も、「話のネタ」を探しながら歩くと景色が変わる。ポストに差し込まれたチラシ、すれ違った親子の会話、古い看板のひと言など、なんでも構わない。(121ページより)

目線を変えれば、なんでもネタになるということ。昨今は電車に乗ればスマホを開くという方も多いでしょうが、あえて中吊り広告や車窓の風景を眺めてみれば、思わぬネタを探し出すことができるかもしれません。(121ページより)

⑤ 感情が動いた瞬間を逃さずストック

最近感動したことはあるだろうか。人間関係の中で、または映画や音楽を鑑賞してなど、あらゆる場面で「泣いた・笑った・怒った・感動した」など、感情が揺れた瞬間をメモや音声で記録しよう。(122ページより)

自分の感情を動かすエピソードは、聞き手の心も動かすもの。具体的なエピソードを盛り込んで想像力をかき立てれば、聞き手はイメージをふくらませることができるわけです。(122ページより)

自分に必要なところから読める実用的な一冊。自分の想いを「ことばと声」に乗せて話せるようになるために、活用してみてはいかがでしょうか。

著者紹介:印南敦史

作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2025年12月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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