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建設会社のサラリーマンは20年余り、休暇を取っては幻のチョウの生態を探り続けた
[レビュアー] 藤井一至(土壌研究者)
藤井一至さん(土壌学者)のポケットに3冊
〈1〉『アゲハ蝶の白地図』五十嵐邁著(ヤマケイ文庫、1540円)
〈2〉『虹の解体』リチャード・ドーキンス著/福岡伸一訳(ハヤカワ文庫NF、1936円)
〈3〉『オノマトペの現象学』鷲田清一著(角川ソフィア文庫、1386円)
建設会社のサラリーマンが休暇をとっては幻の蝶(ちょう)を探し続けたのが〈1〉だ。1960年代の調査は現在のように快適ではない。飛行機の墜落にも下痢にもめげずに20年余かけてテングアゲハの生態に迫る。面白いのは、虫網で捕まえるだけでは終わらないこと。蝶が産卵し、幼虫の餌となる植物を調べることで生き物の繋(つな)がりまで見えてくる。過酷な調査には夫人も同行。「シボリアゲハの野外での卵は残念ながら女房が発見した」という電報には笑ってしまった。
科学が虹の詩情を解体したという詩人キーツの言葉を引用し、科学の価値を主張したのが〈2〉だ。著者は反科学論や妥協を批判し、「科学はとても楽しく面白いもので(中略)といういい方で科学を啓蒙(けいもう)すると結局、将来、どこかで失敗が起こる」と警鐘を鳴らす。ニュートンの虹の解体によって相対性理論が発展し、地球や生命の誕生の神秘が浮き彫りとなる。谷川俊太郎の『二十億光年の孤独』もその一つかもしれない。
その谷川が「存在の手触り」と表現したオノマトペを科学したのが〈3〉だ。ガ行のオノマトペは否定的な意味合いが強く、マ行は欲望のうごめきを表現するものが多いという。著者は、オノマトペの幼児的なものの中にある基盤的な意味形成能力、惰性化しがちな言語を活性化する力に着目する。オノマトペとは、内臓的なものだという説明がじわじわとこちらに染み込んでくる。=寄稿=























