『あんかけ焼きそばの謎』
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【書方箋 この本、効キマス】あんかけ焼きそばの謎 塩崎 省吾 著
[レビュアー] ソーメン二郎(そうめん研究家)
入念な食べ歩き経た論考
そうめん研究家のソーメン二郎です。そうめん文化の研究をやっております。手延そうめん製麺所を訪問し、全国のそうめん料理を食べ歩き、レシピ開発をやり、夏になるとテレビやラジオ番組でそうめんについて話をさせていただいております。
昨年夏、衝撃的な本との出会いがあった。『あんかけ焼きそばの謎』というタイトルが、書店で目に飛び込んできた。ちょうどその頃私は、信州大学客員研究員として長野市に赴任していた。長野と言えば蕎麦が有名だが、長野市の地元の方にソウルフードは何かと聞くと全員一致で「いむらやのあんかけ焼きそば」と言うのだ。「あんかけ焼きそば」とは意表を突かれた気分がして、しかも全員「いむらや」と店名まで決まっているのだ。さらに「そんなに美味しいわけでもないんですけど、何故かたまに食べたくなる味で幼い頃からずっと食べていますよ」という含みのある言い方をする人もいた。
あんかけと言えば長崎の皿うどんしか知らなかったが、早速「いむらや権堂店」に行って、それを注文した。細く黄色い見た目のバリバリに揚げられた麺の上には、甘々のあんがかかっている。揚げ麺が想像以上の山盛りでおおっと声が出たほどだ。テーブルにある酢辛子をたっぷりかけて食べるのが美味しいと事前に聞いていたのでそのように真似た。隣の客人は大盛りを注文し超山盛りになっている揚げ麺を手慣れた作業のように箸で強く押しつぶして黙々と食べていた。これは美味いと完食し、私も大盛りにしたら良かったと後悔した。
この体験から「あんかけ焼きそば」が気になって仕方なかった。そんな時に書店で出会ったのが本書。焼きそばではなくあんかけ焼きそばなのかと思って本を手に取ると、「大好評ソース焼きそばの謎」を超える興奮と表紙に宣伝文句が書いてある。なんとシリーズ2冊目だった。さらに「アメリカから伝来した!?」と結論めいたフレーズも表紙に書いてある。ざっと目次を眺めるだけで未知の焼きそばの世界に没入してしまった。「鳥やきそば」「ヤキソバ」「上海風焼きそば」「長崎皿うどん」「カタ焼きそば」「炒麺(チャーメン)」「チャプスイ」と謎めいた焼きそばの系譜が並んでいた。
著者の塩崎省吾氏の入念な食べ歩きと文献に基づいた検証によって浮かび上がってくる「あんかけ焼きそば考」。脱帽である。論文のようであり、麺類文化学の域まで辿り着いている。謎を追いかけていく途中に「いむらやのあんかけ焼きそば」も登場する。
読了後に唸り、勢い余って面識のない著者の塩崎省吾氏にメッセージを送りお会いして感動を伝えた。そして、偶然その後、本著の早川書房の担当編集者に出会う。「そうめんにも謎がたくさんあるんですよ」と立ち話をしたら企画会議に出しましょうとなったのだ。現在、来年の発売に向けて「そうめんの謎(仮)」を精鋭執筆中であります。
(塩崎 省吾 著、ハヤカワ新書 刊、税込1320円)
選者:そうめん研究家 ソーメン 二郎(そーめん じろう)
奈良県桜井市生まれ。日本ソーメン学会会長。著書に『ラク旨!無限そうめんレシピ』(扶桑社ムック)、企画・原案を担当した絵本に『そうめんソータロー』(ポプラ社)。


























