『彼女たちは楽園で遊ぶ』
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<書評>『彼女たちは楽園で遊ぶ』町田そのこ 著
[レビュアー] 青木千恵(フリーライター・書評家)
◆ホラー仕立てで描く友情
大人たちが追い求める「楽園」で見たものは。女子高生が怖い出来事と対峙(たいじ)する、青春×ホラー小説である。
九州にあるという架空の町、南半里町で生まれ育った高校2年生の凜音は、親友の美央と大喧嘩(げんか)をした。新興宗教「NI求会」に両親が入会して美央が高校を退学したため、仲直りの機会をなくしてしまう。ほどなくして、若者が不審死を遂げる事件が相次ぐ。心配する凜音は、美央を取り戻そうとするが…。
物語は、凜音と、入会した父に連れられて東京から来た高校1年生・初花の視点から語られる。NI求会は、正式名称を「ネイチャーインテリジェンス求道会」という。30年前に刊行された中編小説『楽園の楽園』を“聖書”とし、AI(人工知能)を凌駕(りょうが)する自然の知能、NIを信奉する。南半里町の姫塚山を「聖地」と定めて、宮殿のような施設を建てた。親と移住した美央や初花ら未成年は、施設に閉じ込められてしまう。
10代の視点で怖い出来事を描く本書には、友情や、親の信仰に翻弄(ほんろう)される宗教二世など、今に通じるところがいくつもある。3歳のときに母に去られてトラウマ(心的外傷)を抱えた凜音、両親から主義主張を押しつけられている美央、施設で選考に落ちたため、落胆した両親に置き去りにされた初花。従属的な立場に置かれた子供たちの感情を、丹念に掬(すく)いあげている。
ある者にとってのユートピア(理想郷)が、ある者にとってはディストピア(悪い場所)になる。対等に思いあい、決まった答えなどないのが友情だと思う。支配と従属のような、一方的な関係だと友情は育たない。逆に、心を通わせることができたなら、ささやかなひと時でも、その場所は「楽園」になる。
<あたしさ、美央に理想を押し付けて、美央に固執してたんだ>
果たして凜音は、美央とまた会えるのか。ちなみに本書は、伊坂幸太郎著『楽園の楽園』(25年1月刊)を踏まえて描かれた長編小説だ。『楽園の楽園』も読むと、味わいが増すと思う。
(中央公論新社・2090円)
1980年生まれ。『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞受賞。
◆もう1冊
『楽園の楽園』伊坂幸太郎著(中央公論新社)。選ばれし3人の旅を描く。


























