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ヘミングウェイの日本人作家の評し方がわかる…意外とお得なこの文庫
[レビュアー] 宮下遼(トルコ文学者)
宮下遼さん(トルコ文学者)のポケットに3冊
〈1〉『老人と海』ヘミングウェイ著、福田恆存訳(中公文庫、880円)
〈2〉『世界終末戦争』バルガス=リョサ著、旦敬介訳(岩波文庫、上1507円、下1573円)
〈3〉『モンテ=クリスト伯1』アレクサンドル・デュマ著、前山悠訳(光文社古典新訳文庫、1540円)
黙々と海へ向かう老漁師の姿を静かな筆致で追う『老人と海』。自らの為(な)すべきことを弁(わきま)え、それを果たし続ける人間の気高さがこうも際立つのは、明朗楚々(そそ)たるヘミングウェイの語りにこそよるだろう。また巻末には日本作家たちのヘミングウェイ評が所収され、読後の感想を見事に言語化してくれるのも気持ちいい。
対する『世界終末戦争』は、その物量にこそ圧倒される。愛情と信仰、欲望と暴力とが継ぎ目なく融合する独特の世界に生きる主人公たちの濃密な物語が幾つも重なりあう。聖人に率いられた貧者やはぐれ者たちがブラジル辺境の荒野の街カヌードスに築いた共同体は、自治を墨守すべく国軍との全面戦争へと雪崩(なだ)れこみ、やがてそれは信仰に支えられたカヌードスという一つの世界の存亡をかけた最終戦争の様相を呈していく。伝統的な信仰や生活が激変を余儀なくされた一九世紀末という舞台も相俟(ま)って、読み進めるうち彼らの戦いが辺境のちっぽけな諍(いさか)いではなく、本当に世界最後の戦争になるのではないかという神話的な恐怖と期待にからめとられていく。
三冊目は、世界で一番有名な復讐(ふくしゅう)劇『モンテ=クリスト伯1』。無実の罪で投獄され婚約者を奪われたダンテスを巌窟(がんくつ)王として思い起こす人も多いはず。デュマ作品らしくすらすらと読め、巻末の丁寧な読書ガイドのお陰で、当時新聞連載を待ちわびた読者の気持ちさえ味わえる。=寄稿=























