『昭和 絶滅危惧職業の人々』
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飴細工師、俗曲師、チンドン屋……。昭和100年、「消えつつある職業」の今
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
AIの発達で、今後はいろいろな職業がなくなるなどと言われているが、それよりずっと前から消滅を予言されていた職業はたくさんある。世の中の変化でニーズがなくなったもの、師弟間での技の継承が途絶えたもの、働く「場」が消えたもの。ひとつの職業が消えるのは、時の流れの中で止められない変化なのだろうし、その世界で生きていた人たちも違う場所でまた生きる道を見つけられるならそれでいい。しかしそれでも、懐かしい商売の光景や頼りにしていたサービスが消えるのは心細いことではあるから、われわれは消えていく職業にいつまでも心を残し過去を懐かしむだろうと思う。
この本は、そんな「消えつつある職業」の人々に取材した貴重な記録である。ポプラ文庫の『職業外伝 紅の巻』『職業外伝 白の巻』からのより抜きに、登場人物の近況などを追加した増補版。
飴細工師、俗曲師、チンドン屋など全部で8人。みんな、マニュアルと研修で規格どおり育てられたのではない。その世界に飛び込んでからというもの、能力や人格や人脈などすべての要素を、仕事に合わせながら自分で伸ばしてきたのだろう。恵まれなささえも、自分の個性の一部として取りこんでしまう。そんなしぶとさを感じる。自由である。
富士山は描いても描いても難しいと言う銭湯絵師は、それでも「あのでっかいキャンバスがオレのモノ。東京中にオレのアトリエがある! って思っているんだ」と仕事の高揚感を語る。蝋人形師は人目をはばかる秘密の注文を受けたスリリングな体験と後日談を語る。お座敷を明るく盛り上げる幇間は、プライベートでは人と視線も合わせない控え目な性格だそうだ。
一冊を読みすすめるうちに、じつはこういう仕事こそが最もAIの苦手とするところ、つまり人間らしい仕事なのではないかと思えてきた。


























