『はれときどきぶた』
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なん百頭、なん千頭というぶたが、空いちめんにうかんでいた
[レビュアー] 梯久美子(ノンフィクション作家)
名著には、印象的な一節がある。
そんな一節をテーマにあわせて書評家が紹介する『週刊新潮』の名物連載、「読書会の付箋(ふせん)」。
今回のテーマは「大ぼら」です。選ばれた名著は…?
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なん百頭、なん千頭というぶたが、空いちめんにうかんでいた
『はれときどきぶた』(矢玉四郎)は、80年代にベストセラーとなり、現在も子供たちに大人気の児童文学作品。英語や中国語に翻訳され、アニメ映画やテレビアニメにもなった。
物語はこうだ。日記を母親が勝手に読んでいることに腹を立てた小学生の則安は〈なんとかして、母さんをぎゃふんといわせてやろう〉と思い“あしたの日記”を書くことにする。
まずはトイレに大蛇が出て、自分がやっつけた話。日記を盗み読みした母親を驚かせるためにデタラメを書いたつもりが、翌朝、本当にトイレに蛇が出現する。
その後も、母親が鉛筆を天ぷらにした話や、金魚がアカンベーと言った話を書くが、みんな現実になってしまった。なのに母親も父親もぜんぜん驚かない。そこで則安は、とびきりむちゃくちゃな話を考え出し、日記にこう書いた。
「きょうの天気ははじめははれていましたが、ごごからぶたがふりました」
すると翌日……。
〈なん百頭、なん千頭というぶたが、空いちめんにうかんでいた。
ぶた、ぶた、ぶた、ぶた、ぶただらけ。
ぶたは、いまにもふってきそうだった〉
やっぱり日記が現実になってしまったのだ。怖くなった則安は、日記を消しゴムで消すが……。
この本は作者が絵も描いていて、それが実に味があってユーモラス。空にぎっしりぶたが並んだ場面は、一度見ると忘れられないこと請け合いだ。


























