『君の手が語ること』
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【聞きたい。】デビット・ゾペティさん 『君の手が語ること』
[文] 産経新聞社

デビット・ゾペティさん
■指先に託す日本語の美しさ
昨年11月、成功裏に終わった日本初開催の聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京デフリンピック」を物語の山場にした、日本で40年近く暮らす還暦を迎えたベルギー人の主人公「僕」と聴力を喪失した40代の看護師の梓との恋愛小説。実際に大会にボランティアで参加し「東京デフリンピックを風化させないために、ろう者や手話のことをこの本で知ってほしい」という。
今年で日本在住40年の節目になるスイス人。『いちげんさん』で平成8年にすばる文学賞を受賞し、芥川賞候補にもなった。当時から「日本人以上に見事な日本語を書く」と評され、現在の外国人作家ブームの嚆矢(こうし)の一人だ。「日本語という活字言語が性に合っている。今の僕には日本語以外の言語で文章を書くことはできないと思う」と日本での40年を振り返る。5カ国語の使い手だが「英語や仏語で書き直せといわれたら10年はかかるだろう」と笑う。
スイスで高校生のときに書店で偶然見つけた「独学で日本語を学ぶ」という書籍が日本語との出合い。3年間ノートに日本語を書き写した。人の夢と書いて「儚(はかな)い」のような日本語の美しさ、楽しさにひかれた。本書でも梓が「僕」に「あなた、やっぱり日本的なものが好きなのね。儚いという漢字を思い出すわ」と手話で表現している。
小説執筆以外に日本で始めたことがある。台湾での施術体験を機に、東京都内で経営して10年以上になる足裏マッサージ店のリフレクソロジスト。もうひとつが5年ほど学んでいる手話だ。店での施術中に女性が指揮者のように手話の練習しているのを見て興味を覚えた。以来、手話教室などで刻苦勉励中。「別世界の視覚的言語と初めて出合った。無音だが写像性に富んでいて、音声日本語とは違う美しさがある」。その指先の魅力をこの本に託している。
今年の抱負は、日本の人口減少を題材にした小説の発表と、還暦前後の在日外国人たちの身に起きる「アラ還ストーリーズ」の執筆。「還暦はスイスでは注目されない人生の節目で日本で知った概念。自分も還暦を迎えてみるとまだ若い感じがして、その人生のステージを小説にしたくなった」と話す。(田畑書店・2200円)
斎藤浩
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【プロフィル】David Zoppetti
小説家。1962年、スイス生まれ。同志社大卒業後、初の外国人正社員としてテレビ朝日に勤務。著書に『旅日記』『命の風』など。


























