『不登校は病気?』
- 著者
- 飯島慶郎 [著]
- 出版社
- みらいパブリッシング
- ジャンル
- 社会科学/教育
- ISBN
- 9784434372674
- 発売日
- 2026/01/27
- 価格
- 1,870円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
「僕のやっていることは完全に異端なんです」不登校専門クリニックの医師が語った、子供に寄り添う覚悟
[文] みらいパブリッシング

全国初の不登校専門クリニックを開業した飯島医師
一人ひとりの子供の心の声に寄り添う診療が口コミで評判を呼び、地元・島根にとどまらず全国から相談や受診希望が相次ぐクリニックがある。
不登校を“病気”という視点で診る「不登校専門」の出雲いいじまクリニックだ。
院長である飯島慶郎医師は、「不登校の子供や家族を救いたい」という強い思いから著書『不登校は病気?~医師の診断が子供と家族を救う~』を執筆。医療的支援の可能性を社会に問いかけてきた。
一方でその姿勢は、学会の主流とは距離があるとして「ガイドラインにないことを平気で言っている医者」「めちゃくちゃなことを言っている人」と受け取られることも少なくないという。
それでも飯島医師は、診療の現場で不登校の子どもと家族に向き合い続けている。どのような問題意識を持ち、不登校を医療の立場からどう捉えているのか?
飯島医師に、その真意を聞いた。
不登校の背景にある“見えない病気”
――本の最初に「多くの人が、これまでの不登校の常識に縛られている」と書かれていましたが、“これまでの常識”とは一体どんなものなのでしょうか?
一番大きいのは、「病気という視点がほとんど存在していない」ということですね。
不登校には、うつ病や不安障害、発達障害といった生物学的な要因が大きく関わっているケースが少なくありません。
本来は、生物・心理・社会の三つの側面から考える「生物・心理・社会モデル」で捉えるべきなのに、日本ではその中の“生物学的な視点”が圧倒的に抜け落ちています。
心理的な支援や社会的な配慮については、ここ10年くらいでようやく進み始めました。
では、なぜ生物学的な視点だけが置き去りにされてきたのか。そこには、ある歴史的な経緯があるんです。
実は日本では過去に一度、医療側が「不登校を治そう」としてうまくいかず、そこから撤退してしまったという歴史があるのです。1950~60年代には「学校恐怖症」という精神疾患として扱われ、入院治療まで行われていました。ところが1980年代以降も、不登校の子供は増え続け、そして1992年、文部省が「不登校はどの子にも起こりうる」と方針転換したことで、不登校は「病気」ではなく「教育や社会の問題」として捉えられるようになったんです。その結果、医療側が不登校にあまり関わらなくなり、医学的な啓発もほとんど行われなくなってしまいました。
では、そうして失われてしまった「医学的な常識」とは何でしょうか。
たとえば、子供のうつ病です。実は子供にも、うつ病は普通にあります。これは世界的には常識ですが、日本ではまだ全然浸透していませんよね。
不登校の中には当然のように精神疾患が混じっている。それは特別な話ではないのです。
――なぜ日本では、不登校が医療の問題として捉えられにくいのでしょうか?
多くの場合、教育問題や社会問題として語られてしまい、子供の心身状態を専門的に評価する視点が抜け落ちていると感じます。
一方、欧米では不登校(school refusal)は児童精神医学の領域で扱われており、背景に不安障害やうつ病などの精神疾患があることが多いと認識されています。心の不調があれば医師や心理専門家が早期に関わる。それは特別なことではなく、当たり前の対応として受け止められています。
日本では「無理に行かせなくてもいい」「見守ろう」という姿勢が広まった結果、かえって早期の医療介入が遅れてしまうケースがあります。
国際的には「早期介入が必要であり、予後は欠席期間に依存する」とされており、本来なら早くつながれるはずの医療的・社会的支援が届かないことで、状況を長引かせてしまっているのではないかと思います。
――どうして飯島先生は不登校という事象に着目をして、不登校専門クリニックを開院されたのでしょうか?
三重大学で総合診療医として働いていた頃、頭痛や腹痛などの不定愁訴を多く診てきました。検査をしても異常は見つからず、どこの病院でも「問題ない」と言われてしまう。でも僕たちはそれを心身症として心療内科的に捉え、精神疾患や心の奥にある葛藤にアプローチする診療を行っていました。
「不定愁訴は治らない」と一般には言われがちですが、実際には、症状をきちんと病気として扱い、適切な治療を続けることで改善していくケースを数多く経験しました。この診療スタイルが、自分にはとても合っていたのです。
その後クリニックを開業し、「総合診療医としてどんな症状でも診よう」と考えていました。もともとメンタル分野が強みだったこともあり、心の相談も多く寄せられるようになり、その中に「子供が学校に行き渋って困っている」という相談が数多くあったのです。
そこで気づいたのが、不登校の病像は「子供の不定愁訴」が集まった状態だということです。単に「学校に行けない」のではなく、学校に行こうとすると頭が痛くなる、でも休むと元気になる。最初は多くの場合、心の問題が体の不調として現れてくるのです。
これは、自分が向き合ってきた不定愁訴の診療経験がそのまま生かせる分野だと感じました。
そんな矢先、自分の娘も期せずして不登校になりました。そこで初めて、「これは本気で、自分なりの解決法を見つけなければならない」と覚悟を決めました。娘を治すこと、そして同じように苦しんでいる子供や家族を支えたい――その思いが、今の診療につながっています。



























