【聞きたい。】犬丸幸平さん 『最後の皇帝と謎解きを』 絨毯商が描く、断絶の中の友情
インタビュー
『最後の皇帝と謎解きを』
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【聞きたい。】犬丸幸平さん 『最後の皇帝と謎解きを』 絨毯商が描く、断絶の中の友情
[文] 産経新聞社

犬丸幸平さん
海堂尊や中山七里ら人気作家を輩出した「このミステリーがすごい!」大賞を受賞したデビュー作。1920年の中国・紫禁城で、日本人絵師が少年廃帝の溥儀(ふぎ)と出会い、友情を育み、さまざまな事件を解き明かしていく。「たとえ、国家の関係が良好でなくとも、個人レベルの誠実な交流は成立する」という希望が、今作の核になっている。
原点は、大学時代にバックパッカーとして、中東や南米、アフリカを中心に約40カ国を旅したこと。世界には、簡単には埋まらない人種差別や歴史観の違いによる断絶があることを痛感しながらも、そこに住む人々と自分に差異はなかったと振り返る。
幼いころから漫画『名探偵コナン』の愛読者で、ミステリー好き。小説家を志して、新卒で入社した会社を1年半で退職し、「贅沢(ぜいたく)をせず、食べていければよい」と退路を断って、執筆時間を確保。同賞ホームページに掲載されている選評のなかで、重要だと思う部分を書き出して壁に貼るなど、徹底的に研究した。
とくに心に残っているのが、「リアリティーがない」という内容の指摘。そのため今作では細部まで史実を詰め、登場人物の動きに根拠を求めて、没入感を高めた。常に読者のことを考えて執筆していたと言い、「自分が小説を読んで感動を得てきたように、読者に感動や勇気、一時の『楽しい時間』を提供できればうれしい」と話す。
「近代史が好き」で、舞台に満州国や紫禁城を選んだのは、民族の協調をうたった「五族協和」というスローガンの陰で犠牲になった人々の物語にひかれたからだという。「断絶があるからこそ、その中で成立する友情が浮き彫りになる」と力を込める。
後ろ暗い事情がある日本人絵師の、友である溥儀を「だまし続けていいのか」という葛藤は、立場や国益を超えて、相手と「一人の人間」として向き合おうとする誠実さの裏返しでもある。
受賞を「夢みたい」とはにかむ。現在はパキスタンの絨毯(じゅうたん)の買い付けを生業にしているが、賞金を得たことで当面は執筆に専念できる環境が整った。「甘い世界ではないけれど、最終的には専業作家になりたい」(宝島社・1760円)
三宅令
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【プロフィル】犬丸幸平
いぬまる・こうへい 小説家・絨毯商。平成6年、大阪府生まれ。第24回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、今月9日に今作でデビューした。


























