『ラジオからロックンロールが聞こえる』
- 著者
- 北中正和 [監修]
- 出版社
- シーディージャーナル
- ジャンル
- 芸術・生活/音楽・舞踊
- ISBN
- 9784909774330
- 発売日
- 2025/12/03
- 価格
- 3,300円(税込)
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<書評>『ラジオからロックンロールが聞こえる』北中正和 監修
[レビュアー] 松村洋(音楽評論家)
◆未知の音楽伝えた黄金時代
戦後、ラジオの洋楽(ポピュラー)番組に関わった制作者、DJ、評論家、レコード会社関係者、ミュージシャンら18人が、主に1960年代までの思い出やラジオへの思いを語る。人気番組「9500万人のポピュラーリクエスト」(文化放送)を制作した金子貞男、英語と日本語で語りかける音楽番組の草分け「ポート・ジョッキー」(ラジオ関東、現ラジオ日本)を作った鈴木策雄ほか、亀渕昭信、朝妻一郎、八木誠、石坂敬一ら、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。取材は2008年。ラジオ洋楽番組黄金時代の制作現場と関係者の情熱を伝える本書がようやく公刊されたことを、まずは喜びたい。
海外音楽情報が簡単に手に入らなかった時代、熱心な洋楽ファンは米軍向けラジオ放送WVTR(後のFEN、現AFN)に聴き入った。60年代初頭には「アメリカでこんなものが流行(はや)っているっていうこと自体がすごいニュースになった」と、湯川れい子は回顧している。圧倒的な米国の影響下、米国のラジオ音楽番組は憧れの的だった。
だが、日本の洋楽番組は米国のコピーではなかった。ラジオからは、タンゴほかラテン・アメリカ音楽、フランスやイタリアのヒット曲、欧米の映画音楽など、さまざまな音楽が流れていたことを複数の人が語っている。
もちろんビートルズをはじめ、ロックの新しい波を伝えてくれたのもラジオだった。「AMラジオが“洋楽の窓”として機能」していたと、渋谷陽一は語る。同様の体験は、仲井戸麗市や佐野元春の話にもうかがえる。DJが自分の耳で曲を選び、聞き手はラジオ番組を通して新しい音楽を知った。得られる海外情報が限られていたからこそ、遠い異国の音楽が一層望まれ、また新しい音楽との出会いの衝撃も強烈だった。
一方、情報洪水の現在は、未知の音楽への渇望もそれらとの出会いの衝撃も、ぐっと弱くなってしまったのではないか。高齢の洋楽ファンにとって懐かしさいっぱいの本書は、音楽メディアの現状を考える上でも示唆に富む。
(シーディージャーナル・3300円)
1946年生まれ。音楽評論家。『ロック史』『ボブ・ディラン』など多数。
◆もう1冊
『戦後洋楽ポピュラー史 1945-1975 資料が語る受容熱』三井徹著(NTT出版)


























