102歳の作家「佐藤愛子」の娘が明かす“活火山”に認知症 「母の気に障ろうがケンカになろうが…」腹をくくったエッセイが面白い

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憤怒の人

『憤怒の人』

著者
杉山 響子 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093898300
発売日
2026/01/15
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

作家の母は活火山! 突然噴火し、娘は噴煙や溶岩の巻き添えに……

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 去年、佐藤愛子氏は『百一歳。終着駅のその先へ』という本を上梓、多くの人に読まれた。私ももちろん読み、近年多くは書かなくなったものの、それでも「書くことは楽しい」と言い切る姿勢に、さすがは佐藤愛子と感じ入った。

 と今度は、同居し、長く作家を見続けてきた娘さんがエッセイ集を出した。これが滅法面白い。面白くないはずがない。何しろ母である作家は「かなわん人だった。うるさい人だった――」のである。

 作家は活火山に例えられる。予兆はあるが、多くは突然噴火し、周囲の人、とりわけ娘は噴煙や流れ出る溶岩の巻き添えになる。

 楽しい思い出もある。しかし悲惨な思い出はそれを大きく上回るのだ。大家となって行く作家の折々の姿が描かれる。それを娘がどう眺めどう思ったかが。書くべきはすべて書いたと言う作家に、娘はいくぶん安心したが、作家は、認知症に見舞われる。無理もない。作家は100歳を超えているのだ。母が母でなくなってゆく。この心の揺れ動きは、身内に認知症を抱える人に共通するものだろう。

「私が死んだら『お母さんについて書いてくれ』ってあっちこっちから言ってくるよ。そのつもりでな」母は娘によくそう言い、しかしそれはずっと先の話だと著者は思っていた。

「私は腹をくくった。母の気に障ろうがケンカになろうが関係ない。私は母自身が忘れてしまった母を覚えているのだ。それを書く」とあとがきにあり、著者の覚悟のほどが窺える。全編シリアスではない。思わず噴いてしまうシーンも頻出するので安心されたい。

 骨折や、すったもんだがあり、作家は施設に入所する。2025年11月5日、作家はそこで102歳の誕生日を迎えた。何人かが向かう。被害者同盟でもあるが、作家を愛してやまない人たちである。さてそこでどんな誕生パーティが行われたのか。

新潮社 週刊新潮
2026年2月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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