台湾の元デジタル大臣、オードリー・タンは育ちが良いだけではない……文庫で知る「家族と教育」

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  • オードリー・タンの母が綴る「家族と教育」 世界に絶望した子どもが、自分を取り戻すまで
  • 文庫 フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書
  • 筋肉と脂肪 身体の声をきく

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台湾の元デジタル大臣、オードリー・タンは育ちが良いだけではない……文庫で知る「家族と教育」

勅使川原真衣さん(組織開発専門家)のポケットに3冊

〈1〉『オードリー・タンの母が綴る「家族と教育」』近藤弥生子著(集英社文庫、825円)

〈2〉『フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書』シャルル・ペパン著、永田千奈訳(草思社文庫、990円)

〈3〉『筋肉と脂肪 身体の声をきく』平松洋子著(新潮文庫、935円)

 今年も願いは一つ。与えられた生をまっとうしたい。今日の3冊は「自分を生きる」ことの背中を家族・視座(哲学)・身体性の3領域から押してくれる。

 『オードリー・タンの母が綴(つづ)る「家族と教育」』は、台湾の元デジタル担当大臣オードリーの偉人伝ではない。持病を抱えたギフテッドのオードリーを、実母を中心とした家族とその周りがいかに眼(まな)差(ざ)し、幾多の葛藤を乗り越えてきたか?の記録だ。育ちがよく、盤石な社会関係資本だな……と早合点しそうになったのだが違う。家族の思慮深さと信念の強さは何ら特権的なものではなく、ひとえに「組み合わせ」の妙だ。

 家族に勝るとも劣らず、人生を左右するのは、ものの見方であろう。哲学者のことばを卑近な例とともに紡ぐのが『フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書』だ。自己と社会とをつなぐ手綱が、哲学だ。己に閉じるのでも、我を失って他者評価に振り回されるのでもない生き方の話。いつ始めても遅すぎることはない。

 『筋肉と脂肪 身体の声をきく』は平松が得意とする「食」を基調としつつも、トップアスリートや栄養士などへの丁寧な取材により、身体性×哲学へとテーマが拡張された1冊。「弱さ」とは何か? 「勝つ」ことの本質とは? 今年もままならぬものに巻き込まれながら、この肉体と、この社会との関係性を慈しんで生きよう。それしかない。=寄稿=

読売新聞
2026年1月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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