なぜトランプ大統領は「同盟国」にも無理難題を押し付けるのか?「関税」「グリーンランド領有」…破壊系資本主義の実情を知る

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破壊系資本主義

『破壊系資本主義』

著者
クィン・スロボディアン [著]/松島聖子 [訳]
出版社
みすず書房
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784622098300
発売日
2026/01/19
価格
3,960円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

もはや自由と民主主義は両立しない。国家資本主義は搾取により維持される

[レビュアー] 田中秀臣(経済学者)


トランプ大統領

 トランプ大統領はなぜ関税やグリーンランド領有など、同盟国に対して無理難題を押しつけるのだろうか。同じ民主主義を尊重している国同士なのに謎だ。だが本書を読むとその理由がわかる。トランプ大統領に代表されるネオリベラリズムの主張者たちは、自分たちの経済的自由の前では民主主義を不要だと考えているのだ。

 民主的な社会を穴ぼこだらけに破壊し、そこに富裕層の経済的自由だけを尊重したゾーン(排他的地域)をつくるのが、ネオリベラリズムの狙いだ。民主主義を尊重することは、富裕層や特権階級の経済的自由を時には妨害してしまうだろう。例えば、タックスヘイブン(租税回避地)で資産運用する「自由」は、税の負担を免れていて、不平等だと批判されている。その批判は妥当だ。だがネオリベラリズムの信奉者たちには受け入れ難い話になる。

 つまりここでの経済的自由は、単に富裕層の欲望追求の「自由」でしかない。多くの人たちを幸福にするための経済的自由とは無縁だ。むしろ世界の市民たちは、社会的結びつきを分断され、貧困や経済格差は放置されてしまう。なぜならゾーンに住んでいる人たちには、貧困は目にみえないため存在しないに等しいからだ。壁とセキュリティに守られたゲーテッドコミュニティが米国だけでなく、世界の到るところに存在している。そこでの「自由」は、他者を疎外し、ある意味の搾取をすることで維持されている。中国やロシア、そしてトランプ政権の目指している国家資本主義は、まさに国レベルや世界規模でのゲーテッドコミュニティを生み出す試みだ。本書では、香港、ドバイ、ロンドン、シンガポール、ソマリアなど各地のエピソードが豊富だ。

 また賛否がわかれる論争の書でもある。だが、市民の自由と民主主義を分断する破壊系資本主義の実状を知るにはこれ以上のものはない。

新潮社 週刊新潮
2026年2月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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