そこにいたものにしか書けない……ラランド・ニシダさんの心揺さぶられた福島を描く文庫

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク
  • いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(上)
  • 本に狂う
  • 日本俗信辞典 食物編

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

そこにいたものにしか書けない……ラランド・ニシダさんの心揺さぶられた福島を描く文庫

[レビュアー] ニシダ(お笑い芸人)

ラランド・ニシダさん(お笑い芸人)のポケットに3冊

〈1〉『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』竜田一人著(講談社文庫、上下巻各792円)

〈2〉『本に狂う 草森紳一ベスト・エッセイ』平山周吉編(ちくま文庫、1210円)

〈3〉『日本俗信辞典 食物編』花部英雄著(角川ソフィア文庫、1540円)

 〈1〉この文庫紹介のコーナーは、連載当初に行われた打ち合わせを思い出すに、漫画は含まないものだと理解している。しかし買って読んで良かったのだから仕方がない。本書は震災後の福島原発の廃炉作業に携わった著者のルポ漫画だ。廃炉作業に関する説明が豊富で、ルポとして絵があることによっての利点を強く感じた。また、悲観とも楽観とも違う、中立を保つルポとしての視点のたしかさが読み取れる。福島での生活、原発での仕事で見える景色はそこに居なかったものには描き得ない。

 〈2〉わたしもそれなりに本が好きである自負はある。けれど、本書を読むとそんな自負なんて塵(じん)芥(かい)のような気がしてくる。帯には“博覧強記の雑文家”と紹介されていたが、文学は勿(もち)論(ろん)のこと雑誌、漫画、デザインや建築など紙に出力される情報ならなんでも読む。スポーツやカルチャーにも詳しい。なにより文章が簡潔かつ濃密。多くの固有名詞を含みながらも抵抗なく読まされる。天にそびえる知識の大壁の前に立たされたような読後感は本書が唯一だろう。

 〈3〉“げたをはいて餅をつくと双子が生まれる”といったような日本の俗信が収集されている。社会の規範や生活の知恵から来る俗信も多いが、一見無意味に見えるものも多い。ちなみに先ほど書いた俗信は、げたの歯が二本あることからの連想であるらしい。社会規範でも生活の知恵でもないパターンである。=寄稿=

読売新聞
2026年2月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク