『天才科学者の頭のなか』
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【毎日書評】ただの努力で終わらせない。世界を変えた天才たちの「思考プロセス」を盗む
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『天才科学者の頭のなか』(左巻健男 著、あさ出版)の冒頭では、発明王として知られるトーマス・エジソンが残した「天才とは、1パーセントのひらめきと99パーセントの汗(努力)である」という有名なことばが紹介されています。
一般的にこれは、「努力が重要」という意味で理解されているかもしれません。しかし見逃すべきでないのは、このことばの本当の意味としてエジソンが、「1パーセントのひらめきがなければ、99パーセント努力してもムダになってしまう」とも述べている点。
つまり、ひらめきがあったからこそ、99パーセントの努力が意味を持ち得たということ。
実験をすることで多くの失敗からも学ぶことができ、その結果としてより明快に、具体的な答えを導き出すことができたのです。そして、それが多くの発明や発見につながっていったということなのでしょう。
では、その「ひらめき」とは、いったい何なのでしょうか。
この本では、タイトルにもあるように、世界を大きく変えてきた科学者や発明家たちの「50のひらめき」を紹介しています。(「はじめに」より)
そんな本書の第1章「物理学――世界の法則を考え続けた天才たち」のなかから、ブレーズ・パスカルについての記述を取り上げてみたいと思います。
考えるとは、この世にないものを見つけ出し、創り出す力だ
ブレーズ・パスカル(1623-1662)
主な功績
・パスカルの定理の発見
・機械式計算機の発明
・大気圧を実験で証明
・パスカルの原理の発見
(22ページより)
1623年にフランスのクレモンで生まれたパスカルは、母親を早くに亡くし、学問好きの父親に育てられました。1631年にパリに引っ越すと、父親はしばしば学者を招いて議論を重ね、まだ小さかったパスカルもそこに参加していたといいます。
ことばや考え方を学ぶ大切さを知っていた父親は、パスカルに「小さいうちは数学をさせない」と決めていたそう。しかし本人は自分で考え、数学の本に書いてあることを発見してしまったというのですから驚きです。
16歳で「パスカルの定理」という数学の大発見をし、19歳のころには父親の仕事を助けるために計算機をつくり始め、2年ほどで完成させました。1651年に父親が亡くなってからは、「人はなぜ生き、なぜ死ぬのか」と考えるようになり、科学と心の世界の双方で偉大な足あとを残したのでした。
そしてもうひとつ、その功績を語るうえで無視できないのが「パスカルの原理」です。はたしてそれは、どのようなものなのでしょうか?(22ページより)
空気の重さを可視化するにはどうしたらいい?
パスカルはあるとき、「空気にも重さがあるのではないか?」と思いつきます。いまでは誰もが知ることですが、300数十年も前にこうした疑問を抱いたことは、それ自体が画期的だったといえるのではないでしょうか。
そして彼はこの考えを確かめるために、水銀とガラスの管を使った実験を計画したのでした。それは、山の上とふもとで、空気の重さが違うかどうかを調べるためのもの。
ところがパスカルは体が弱かったため、自分で山に登ることができなかったのだとか。そこで義理の兄のペリエに頼み、故郷クレルモン近くのピュイ・ド・ドーム山(標高約1465m)で測定をしてもらったのでした。
1648年9月19日、ペリエはふもとと山頂で水銀柱の高さを調べました。すると、山頂では水銀柱が低くなっていました。これは、ふもとでは空気の重さが大きくかかっているのに対し、山頂ではその分空気の量が少なく、重さも小さいことを示していました。(24ページより)
繰り返しになりますが、多くの人は空気に重さなどないと考えていた時代のことです。もしかしたら、そんなことを考える人も限られていたかもしれません。
でも、それは当然のことでもあったでしょう。なにしろ空気はどこにでもあるのに、体にのしかかってくるような感じ(重み)がしなかったのですから。
パスカルは、それは空気の圧力が上下左右に同じようにかかっているためで、そのため重さを感じないのだと説明しました。(25ページより)
イラスト:小松聖二
かくしてパスカルは、空気にも重さがあることを確かめたわけです。
ご存知のとおり、空気がその重さで地面を押す力のことを「気圧」と呼びます。気圧は天気や気象の研究に欠かせないだけでなく、飛行機の設計や高層ビルの建設、登山での体調管理など、現代を生きる私たちにとって身近な場面にも深く関わっています。
なお、のちに気圧や圧力の単位が「パスカル(Pa)」と名づけられ、世界中で使われるようになったことも有名な話。
そうしたひとつひとつのことを引き合いに出すまでもなく、パスカルが果たしてくれたことに私たちは感謝すべきなのかもしれません。(24ページより)
本書で紹介されている科学者たちは、私たちにも応用できるさまざまな見地を提示してくれるはず。しかも気負わず読めるので、参考にしてみる価値は大いにありそうです。
作家、書評家、音楽評論家
印南敦史
1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: あさ出版


























