『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓 1977-2025』
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波瀾万丈すぎる人生と思い出レシピが、ミルフィーユのように重なる本
[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)

料理家の麻生要一郎さん(アットプレスより)
私が麻生要一郎さんを知ったきっかけは、美味しそうなお弁当の写真だった。でっかい唐揚げなど、ご飯の倍の量はありそうな茶色いおかず、そこへ気の利いた漬け物やレモンの薄切り、人参をくりぬいて作られた飾り。写真を見るだけでも美味しさと愛情が伝わった。こんなお弁当を作れる人は、どんな人なんだろう? 辿っていくと、失礼を承知で記すが「超チャーミング」なお兄様であることがわかった。そこから大ファンになり、友人のおかげで夢が叶い2022年に本物のお弁当を食べることも出来た。私の人生で大切な思い出の味になっている。
本作『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓 1977-2025』(オレンジページ)は、元々ウェブで連載されていたエッセイをまとめたものだが、時系列を補強するように差し込まれた自伝部分は書き下ろしである。自伝の部分は茶色、エッセイ部分は白い頁で交互に重なっており、横から見るとミルフィーユのよう。本当のミルフィーユなら全て同じ味だがこれは層ごとに味が全く違うことに気付く。読み進めるほどに彼の人生には(多くの人がそうであるが、特筆するほど)いろんな層があることがわかってきた。家業の建設会社跡取り時代、カフェ時代、宿時代、料理家時代……これが波瀾万丈と言わずしてなんと言おうか。「人生の大事に出てくる僕の、腹芸と寝技は、祖父からの継承である。」という一文を読み、超チャーミングなんて思ってしまって申し訳ございませんと首を垂れた。あの穏やかな笑顔は、強い人しか出来ないものなのだ。我を通す強さと、運命を受け入れる柔軟さ。タイトルも、本の構成も、彼の魅力的な佇まいの種明かしのようだ。
各エッセイの締めにはその時代の思い出レシピが載っている。それを作った人の思いや背景を含めて味を想像する。料理は分量と作り方が同じでも、作る人が違えば同じ味にならないと私は思う。だからこそ、思い出の味は上書きされず、そのレシピはお守りのように輝くのだろう。



























