谷川俊太郎『詩人S 谷川俊太郎単行本未収録詩集』を日和聡子さんが読む

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詩人S 谷川俊太郎 単行本未収録詩集

『詩人S 谷川俊太郎 単行本未収録詩集』

著者
谷川 俊太郎 [著]
出版社
集英社
ジャンル
文学/日本文学詩歌
ISBN
9784087700411
発売日
2026/04/06
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

谷川俊太郎『詩人S 谷川俊太郎単行本未収録詩集』を日和聡子さんが読む

[レビュアー] 日和聡子

応答と発信

『詩人S 谷川俊太郎単行本未収録詩集』は、2024年11月に亡くなった詩人・谷川俊太郎氏の、単行本化された自身の詩集には収録されていない詩84編を収める。

 収録作は、発表された時期も媒体も多様である。最も古いものは、1948年、著者の高校時代に発行された「豊多摩」復刊第二號(都立豊多摩高等学校文芸部)に掲載された「つばめ」。〈ループイムメルマンターン ダイヴ…/美しい線を画いて楽しげに全く楽しげに/飛び交ふつばめ〉とはじまる本作は、このあとに刊行される第一詩集『二十億光年の孤独』(1952)にもつながる清新さを持ち、当時の空気に混在する新旧の香りと鮮明さを感じさせるとともに、生命に対するまなざしや捉え方、それらをシンプルな言葉でかろやかに描くなど、のちの著者の特色をすでに備えたものとして注目される。

 また本書には、著者が翻訳を手がけたことでゆかりのある「スヌーピー展」をはじめ、さまざまな展覧会やイベント、雑誌や共著、他者の作品に対してなど、折折の機会や対象に寄せて書かれた詩が数多く収録されている。表題作「詩人S」は、映画『谷川さん、詩をひとつ作ってください。』(2014)のための書き下ろし。著者本人を思わせる〈詩人S〉のあり方が滲む最終部が心に残る。〈情報でも意見でも説明でもないコトバ/自己憐憫(れんびん)でも自己主張でも自己表現でもないコトバ/木っ端のような石ころのような水たまりのようなコトバ/辞書から脱走しテレビからこぼれ落ち/新聞を尻目に雑誌を黙殺し/(中略)/闇を味方にして人の虹彩を焼くコトバ//に焦がれてSは今日も途方に暮れている〉

 職業としてまた一個人として、公的にも私的にも、長きにわたり詩人として応答し発信した。その多彩な活動のなかで数多く生まれ、読まれてきた作品群に、新たなこの一冊が加わった。詩が寄せられた対象にも想いを馳せながら、それらと合わせて読む楽しみももたらされた。
 

日和聡子
ひわ・さとこ●詩人、小説家

青春と読書
2026年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

集英社

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