【GWおすすめ本5選】船橋洋一が唱える日本の『戦後敗戦』に納得せざるをえない理由とは? 復興後の「油断」が落とし穴

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関川夏央「私が選んだBEST5」GWお薦めガイド

[レビュアー] 関川夏央(作家)

『戦後敗戦』というが「戦後」の日本は順調であった。防衛は日米同盟任せの軽武装、経済に集中して、ひたすら民生の向上を目指すことができた。冷戦下ソ連への防潮堤としての「地政学」的位置もそれを助けた。

 しかし1973年秋の第4次中東戦争で世界は変わった。「石油はどこからでも買える」と「油断」していた日本は、産油国が石油を武器として使う「地経学」手法に転じたと知ったが、この新たな波に対応する構造改革に踏み切れなかった。それを船橋洋一は2回目の「敗戦」とした。

 1990年から91年の湾岸戦争では、日本は憲法で多国籍軍への人的貢献はできないとして、かわりに130億ドルという巨額を拠出した。なのにクウェートには感謝されず、むしろ世界に憫笑されて「一国平和主義」は破綻した。

 プラザ合意、半導体の戦い、ネットの戦い、尖閣海域への中国進出、福島原発危機と「敗戦」はつづく。現在の沈滞は繁栄のピークにきざしていたという見解には、「昭和育ち」としては抵抗したくもなるが、説得力をもって語られればうなずかざるを得ない。これら「敗戦」の教訓は、「成功は失敗の母」だろう。

『増補 復興の書店』の親本は、東北三県の被災書店を取材して2012年8月に出た。この著者には誰も警戒心を持たず、いくらでも話したくなったはずだ。2014年秋、小学館文庫に入ったが、著者は2024年1月1日に起こった能登地震の被災書店も取材した。人口減少、ことに子供の減少が顕著なうえに、紙の本・雑誌の売り上げは1996年の4割以下という昨今の事情を反映した稿を加え、2026年2月、2度目の文庫化で岩波現代文庫に入るとき、題名に「増補」と付した。本も著者も成長するのである。

『怪談の真髄』は小泉八雲の「怪談」を、ていねいに読み直した本だ。八雲夫人セツが怖い話の載っている本を探して読み、それを八雲に日本語で話して聞かせ、八雲が自分のセンスで英語に書き起こした。再話文学というが、セツの話し方と八雲の感じ方を経た「二重の再話」という新ジャンルになっている。

『くらやみ小学校』は、帯に「学校の怪談より怖い!!」、「『先生』の衣をまとった怪物」とある。たしかに子ども相手に小さな権力をふりまわす下品な教師がいて、彼らを「許せない」と半世紀思い続ける、感受性と正義感の強い女の子もいた。昭和40年代とはそういう時代だった。

『百年の短歌』で著者は若い歌人(平岡直子)のこんな歌を紹介する。

「三越のライオン見つけられなくて悲しいだった 悲しいだった」

 約束した三越デパート前のライオン像を見つけられなくて、会えなかった(遅れた)。「口語化」百年を経て、短歌は「悲しいだった」という軽みある切実さに到達した。

新潮社 週刊新潮
2026年5月7・14日ゴールデンウィーク特大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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