【GWおすすめ本5選】異世界で繰り広げられるミステリ、アクション、ロマンス!もう続編が待ち遠しい小説『記銘師ディンの事件録 木に殺された男』など

レビュー

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  • 記銘師ディンの事件録 木に殺された男
  • 黄金仮面の王
  • エデンの裏庭
  • 粉瘤息子都落ち択
  • フェイスウォッシュ・ネクロマンシー

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石井千湖「私が選んだBEST5」GWお薦めガイド

[レビュアー] 石井千湖(書評家)

 風変わりな異世界に連れて行ってくれる小説に目がない。今期のベストは、世界幻想文学大賞とヒューゴー賞をダブル受賞したロバート・ジャクソン・ベネットの『記銘師ディンの事件録 木に殺された男』。雨季になると東の海から“リヴァイアサン”と呼ばれる怪物が襲来する神聖カナム大帝国を舞台に、技術省高官が体に巨大な木を生やして死んだ事件の謎を描く。

 帝国はリヴァイアサンの脅威に対抗するため生体改変技術を発達させ、人為的につくった特殊能力者を軍人兼役人として採用している。主人公のディンは、二十歳そこそこの青年。司法省の捜査官アナの助手で、すべてを見たまま記憶できる記銘師だ。感覚が鋭すぎるアナは、一日の大半を目隠ししたまま過ごし、まったく外には出ない“いかれた家猫”のような中年女性。ディンはアナの代わりに現場に赴き手がかりを集める。安楽椅子探偵ものとしてまず読み応えがあり、アクションやロマンスもあって楽しい。事件の真相にたどりつくと、怪物の名前がリヴァイアサンである意味を考えてしまう。エンターテインメント性の高い物語を骨太な思考が支えている。シリーズ続編が待ち遠しい。

『黄金仮面の王』は、ボルヘスやボラーニョ、澁澤龍彦、江戸川乱歩、倉橋由美子にも多大な影響を与えたと言われるフランスの幻想作家マルセル・シュオッブの傑作集。二十二編を収める。これまでは分厚い全集でしか読めなかった作品の数々が、文庫で読めるようになったのは画期的だ。

 表題作は仮面をつけた人間しか知らなかった王が、盲目の老人の言葉によって自らの根底を揺るがされ、“生身の顔”に出会う話。真実はたいてい残酷で癒されないけれども、どこか解放感があるものだと思う。

 吉田篤弘『エデンの裏庭』は、創作と書評をミックスした「物語の舞台袖」という試みが新鮮だった。『不思議の国のアリス』『ガリヴァー旅行記』『星の王子さま』『モモ』を精緻に読み込んで、それぞれの物語の語られていない部分に何があったかということを自由に想像している。

 更地郊『粉瘤息子都落ち択』は、第四十九回すばる文学賞受賞作。メンタルを病んで会社を退職した二十七歳の男性が、自動販売機に貼られたテープをメルカリに出品する。そのテープに書かれた珍妙な呪文のような言葉に引き込まれる。タイトルからしてポップな現代詩みたいな小説。

 栗原知子の『フェイスウォッシュ・ネクロマンシー』は、第四十一回太宰治賞受賞作。主人公の手が洗顔料できれいになったらなぜか亡き祖母の幽霊があらわれるという設定が最高だ。四十代の女性の寄る辺なさを詩人でもある著者がユーモラスな筆致で描いている。

新潮社 週刊新潮
2026年5月7・14日ゴールデンウィーク特大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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