『部下をもったらいちばん最初に読む伝え方の本』
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【毎日書評】部下が自ら動き出す!成長を促す「ポジティブ・フィードバック」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「これは言ったほうがいい。でも、機嫌を損ねたら関係が悪化するかも」
「厳しく指導したいけれど、パワハラになるのだろうか」
たとえばこのように、部下と向き合うマネジャーは“無意識のブレーキ”を踏んでしまいがち――。
『部下をもったらいちばん最初に読む伝え方の本』(橋本拓也 著、アチーブメント出版)の著者はそう指摘しています。
もちろん、上記のような思いは自然なものです。しかし、不安に基づくネガティブなブレーキが強くなりすぎてしまうと、結果的に組織は前へ進まなくなってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。
「何のためにどのような心構えで関わるのか」というあり方と、実際に現場で「どのような伝え方をするのか」と言うやり方の技術。この2つが噛み合ってはじめてマネジメントは機能し始めるのです。(「はじめに」より)
本書は、マネジャーとしてなにを大切にするのか、どんな前提で部下と向き合うのかといった“マネジメントの土台”を中心とした前作『部下をもったらいちばん最初に読む本』(アチーブメント出版)に次ぐ新刊。
今回は、マネジャーを立ち止まらせてしまう「考え方と実際の行動のあいだにある壁」に正面から向き合うために書かれています。
ただし、「こう言えば部下が動く」といった即効性を狙ったフレーズ集ではなく、「メンバーとの日ごろの関係性をより上手に築き上げること」「相手が受け取ることのできる伝え方を身につけること」を目指しているとのこと。
きょうは第3章「フィードバックで成長を促す」のなかから、「フィードバック」についての基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。
フィードバックは「情報提供」である
いうまでもなくフィードバックとは、行動や結果についての意見などを相手に伝えるコミュニケーション手段。その根底には、「成長してほしい」「改善すべき点に気づいてほしい」という思いがあるわけです。ところが冒頭で示したように、どこかネガティブなイメージがついて回ってしまうのも事実かもしれません。
しかし著者の考え方は、少し違うようです。
相手がまだ気づいていない事実を伝えることで、より良い状態へ向かうための材料を渡す。だから私は、フィードバックはメンバーの成長に貢献する、非常にパワフルなコミュニケーションだと考えています。(117ページより)
もちろん、伝え方やタイミング、相手への配慮を欠かすことはできないでしょう。しかしその前提として、「フィードバックは“嫌なことを言う行為”ではなく、“成長を支えるための情報提供”だ」と知っておくべきだというのです。
そんな視点を持つだけで、フィードバックに向き合う感覚は大きく変わっていきます。
なお、リードマネジメントを実践する際に、忘れてはいけないのが「人は変えられない。しかし、人は変われる」というスタンス。人は自己評価で変わるもの。つまり人が“変わる”のは、最終的に自らが気づいたときだということです。
一方、他者評価で人を変えようとするのは外的コントロール。人を変えようとしてガミガミ言ったり、批判したり、文句を言うなど外部からの強い刺激を与えることで、部下を思いどおりに動かそうとすることを意味します。
しかしそれでは、短期的に成果が出ても関係性の悪化や主体性が失われ、組織効率が下がってしまっても無理はありません。
人は他者から「良い/悪い」と言われたから変わるのではありません。自分の中で気づきを得て「もっとこうしたほうがいい」「もっと改善できる」という内発的動機が起きることで、はじめて人は変わるのです。(119ページより)
重要なのは外的コントロールではなく、最終的にメンバー本人が「たしかにそうだ」と納得し、自ら行動を変えられるようにすることなのです。
マネジャーは評価やアドバイスによってメンバーが変化することを期待しがちですが、マネジャーにできることは、よい人間関係を築くことと、情報提供のみ。つまり人を育てる名人は、そうしたフィードバック、情報提供の名人だということです。(116ページより)
相手を承認する「ポジティブ・フィードバック」
フィードバックは大きく2つに分かれます。ポジティブ・フィードバックとギャップ・フィードバックです。ポジティブ・フィードバックとは、世に言う「承認すること」を意味します。注意してもらいたいのは、承認を報酬にして相手をコントロールしようとしないことです。(121ページより)
「ほめてあげるから、もっとがんばれ」「承認してあげるからやる気を出せよ」というような“承認したんだから〇〇してほしい”という意識は、外的コントロールにつながるもの。それでは、メンバーとの良好な関係性など保てるはずもありません。
したがって、事実に基づいて承認することが重要なのです。
本人が自分で気づいていることも、気づいていないことも含め、客観視できる「事実」をもとに情報提供すること。それが、ポジティブ・フィードバックにおいては大きな意味を持つわけです。
つまり、単に表面的なほめことばを羅列するのではなく、“事実”として本人の努力や行動による好影響を言語化するのです。それが相手の自信を効果的に高め、強みを強化し、前向きな願望を持たせるきっかけになるということです。(121ページより)
著者によれば本書は、“部下が自ら動きたくなる”関わり方の技術書。ここに書かれた内容を身につけることで、「言いたいことが言えない」無意識のブレーキから解放されるのだといいます。「部下の欲求を満たしながら、言うべきことを伝える」ことができるようになるために、参考にしてみる価値はありそうです。
作家、書評家、音楽評論家
印南敦史
1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X
Source: アチーブメント出版


























