「多党制」へ転換するかと思われた日本政治が「自民党の歴史的圧勝」で一転…現代政治史で解き明かす『二大政党制と多党制』

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二大政党制と多党制 政党政治の実相と可能性

『二大政党制と多党制 政党政治の実相と可能性』

著者
待鳥聡史 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784022631480
発売日
2026/04/10
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

現代政治史で解き明かす「多党制」の危うい“未来”

[レビュアー] 谷口功一(東京都立大学教授)


日伊共同記者発表に臨む高市早苗総理(6月15日、首相官邸HPより)

 本書『二大政党制と多党制 政党政治の実相と可能性』(待鳥聡史・著)はその前段で、実証政治学の標準的な知見を丹念に積み上げ、また、英米欧各国、そして日本における政治史の流れをコンパクトに読みやすく整理して提示している。その上で、「二大政党制」と「多党制」という2つの政党システムに関する明晰な見通しを与えてくれる一冊となっている。

 特に第5章で二大政党制について、それが(1)政党間競争を促すのか?(2)少数派の抑圧を引き起こすのか?(3)政党間の差異を明確化するのか?(4)分極化をもたらすのか?(5)迅速な政策決定をもたらすのか?(6)日本政治には向いていないのか?といった極めて端的な問いかけに対してクリアに回答する形で、その神話的イメージや誤解を解きほぐしてゆく手並みは鮮やかである。

 本書の理論的立場に則るなら、政党政治のあり方に最も強い影響を与えるのは「選挙制度」と「執政制度」という2つの基幹的政治制度である。選挙制度に関しては比例性が高ければ多党制を帰結し、小選挙区制など比例性が低ければ二大政党制を帰結しやすい。また、執政制度については、大統領制は二大政党制を帰結しやすいが、議院内閣制はそれのみでは特定の政党システム(二大政党か多党か)を導かず、むしろその決定要因は選挙制度のほうにあると説明される。

 我が国においては、国政は議院内閣制でありながら地方政治は大統領制(二元代表制)であることや、二院制の下で参院の比例性が高いことなどが「マルチレヴェルミックス」の形で存在していることが事態の一層の複雑さを形成しているのである。

 現代日本政治の展開は誠に急であり、2024~25年の衆・参院選で連続して与党が過半数割れし、「ネオ55年体制」から「多党制」への転換が強く意識されたが、しかし、26年の衆院選では自民党が歴史的圧勝を収め絶対安定多数どころか単独で改憲発議ラインを超えることとなった。

 他方、参院は依然として「多党制」の状況にあるが、本書では「穏健な多党制」というイメージが特定の時期の社会経済的環境や国際環境に大きく依存したものに過ぎず、急進勢力の伸張・定着を回避することが困難な政党システムなのではないかと繰り返し警告を発している。

 この最後の点が恐らく本書の最も論争的な部分でもあるのだが、最直近の国政選挙となるだろう2年後の第28回参院選において、その答え合わせがなされるはずである。

新潮社 週刊新潮
2026年6月25日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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