仕事で変わる性格、性格で変わる適職。それでも「自分を無理に変えなくていい」

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性格は変えられるのか - いまの自分を好きになれない人へ -

『性格は変えられるのか - いまの自分を好きになれない人へ -』

著者
小塩 真司 [著]
出版社
ワニブックス
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784847067259
発売日
2026/04/27
価格
1,045円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】仕事で変わる性格、性格で変わる適職。それでも「自分を無理に変えなくていい」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

自分の性格は、変わるのだろうか。

仕事を始めたら、人は変わるのだろうか。

誰しも、こうした疑問を抱くことがあります。そしてそんなとき、私たちは自分の経験や、身近な人の様子から答えを出そうとするもの。しかし、自分のまわりで起きたことを「誰もがそうだ」と拡大解釈してしまうのは、私たちがもつ認識の癖。

『性格は変えられるのか いまの自分を好きになれない人へ』(小塩真司 著、ワニブックス【PLUS】新書)の著者はそう指摘しています。しかし、そもそも「性格」とはなんなのでしょうか。「変わる」とは、どういうことを指すのでしょうか。

この短い問いの中に、二つのあいまいな言葉が含まれています。

心理学の専門用語としての「性格」と、日常語としての「性格」についてです。また、統計的に測定される「変化」と、私たちが主観的に感じる「変わった」という実感です。(「まえがき」より)

このふたつのズレを整理しないままでは、「性格は変わるのか」という問いに、十分に応えることはできないわけです。

本書ではさまざまな角度から「性格」について解説されていますが、とりわけビジネスパーソンにとって気になるのは、「就職や仕事などのライフイベントが、本当に人を変えるのか」ということではないでしょうか?

そこでここでは第3章「ライフイベントは本当に性格を変えるのか」のなかから、仕事に関するトピックスを抜き出してみたいと思います。

仕事が性格をつくり替えていく

学校から社会に出る「仕事」というライフイベントは、性格を変える大きなきっかけになるはず。事実、学生だった若者と、働き始めて数年経ってから再会したとき「大人になったな」という印象を抱くことはあるものです。

学生から社会人への移行は、性格にとって大きな「成熟」の機会のひとつだと考えられているようです。とくに重要なのが、「初めて定職に就く」という出来事。

最初の就職は、単なる収入の獲得ではありません。それは、「責任ある役割を引き受ける」という意味を持っています。職場では、遅刻をしないこと、納期を守ること、チームで協力すること、顧客に確実に対応することなど、明確な行動上の規範が求められます。(102〜103ページより)

職業生活においては、きっちりとした時間管理や、しっかりとした責任遂行が求められるもの。学校生活を経て就職し、より厳格な環境を経験することで、人はより速く「まじめ」で「律儀」で「きっちりと」した特徴へと近づいていくわけです。

つまり私たちは、「責任を自分に引き受けた分だけ」変わっていく可能性があるようです。したがって自分を変えたいと思うなら、抽象的に「変わりたい」と思いを巡らせるのではなく、「そこから逃げられない重要な役割」に身を置いてみることが大切。そのほうが、強い変化への圧力を経験できるのです。(102ページより)

仕事が性格を選ぶ

しかし仕事と性格との関係は、一方向のものではありません。「仕事が人を変える」だけでなく、「性格が仕事を選ぶ」という側面もあるのです。

もともと、勤勉性や情緒安定性が高い人は就職に成功しやすく、安定した職に就きやすい傾向があるとも言われています。このような現象は、「選択効果」とも呼ばれています。そしてさらに重要なのが、「その人をその仕事に導いた特性こそが、その仕事を通じてさらに強化される」という点です。自分の強みがどんどん伸びていくような現象です。(104ページより)

協調性が高い人は、人間関係内のさまざまな葛藤や対立に対し、「防波堤」のように働いていくもの。同僚が攻撃的であっても、その場をなんとかおさめようとして負の連鎖を食い止める傾向があるのです。

一方で、慢性的な対人トラブルやサポートが不足することはリスクにもつながります。強いストレス環境に長くさらされると、不安や怒りが増し、情緒安定性が損なわれかねないからです。職場環境は、ある側面の性格を伸ばしていく場にもなれば、抑制してしまう場にもなるということです。(104ページより)

性格だけが結果を生み出すわけではない

こうした考え方を踏まえたうえで、著者は第5章「あなたの性格は変えるべきものなのか」で重要な問いかけをしています。最後に、その点を確認してみましょう。

これまで世界中で積み重ねられた性格の研究では、「特定の性格特性は、特定の行動傾向や社会的な結果と一定の関連をもつ」ことが繰り返し示されているそう。

たとえば、外向性が高い人ほど、人との交流の頻度が多くなりやすく、友人関係の広がりや主観的幸福感と関連することが知られています。また勤勉性(誠実性)が高い人は、学業成績や職業上の評価が高くなりやすく、健康行動も安定しやすい傾向があります。情緒安定性が高い(神経症傾向が低い)人は、ストレスへの対処がうまく、抑うつや不安のリスクが相対的に低いことが示されています。(174ページより)

こう聞けば、「やっぱり性格がキーポイントになるんだな」と思えるかもしれません。しかし重要なのは、これらはあくまでも「関連」や「予測」であって「確定事項ではない」ということ。

研究で報告される関連の強さは多くの場合、「やや当たりやすい傾向がある」という程度のもの。しかし、なにかしらの特性を持っているからといって、必ずその行動をとるわけではなく、例外はいくらでもあるからです。

集団全体で見ると、確かに何かしらの傾向はあります。しかし、個人レベルでは、いくらでも例外が生じてくるのです。外向性が低くても優れた営業職の人はいますし、勤勉性が高くても職場に適応できない人はいます。統計的な傾向は、「全体としての法則」を示してはいても、「あなたがどうなるか」を断定するものではないのです。(175〜176ページより)

性格は行動をある程度予測するものですが、決してひとりひとりの人生を決めつけるものではないのです。だからこそ、「性格を変えるべきか」という問いは単純な話ではありません。

性格を変えなくても、環境や役割を変えることで問題が解消することはありますし、むしろその方が現実的な対応策である場面も多いのです。(177ページより)

もちろん性格に働きかけることが有効な場合もあるでしょう。しかし、さまざまな場面で「いまここで性格を変えるべきなのか」と考えてみることは、決して無駄ではないのかもしれません。(173ページより)

うまくいかないことがあると、つい「性格を変えたい」と思いがち。しかし本書を読み込んでいけば、性格を変えることだけが絶対的な答えではないということがわかるはず。大きな壁に直面しているときこそ、手にとってみたい一冊です。

作家、書評家、音楽評論家

印南敦史

1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

Source: ワニブックス

メディアジーン lifehacker
2026年6月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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